即時オープンアクセス実現に向けた基本方針について

2023年5月に広島で開催されたG7サミットにおいて、即時オープンアクセス(OA)の推進が議題に上がりました。このサミットでは、研究成果の迅速な公開を通じて、科学の進展と社会への貢献を促進する重要性が強調されました【G7広島サミット2023】。即時OAは、学術情報を広く共有し、研究の進展を加速するための重要な手段として、ますます注目されています。本コラムでは、内閣府科学技術・イノベーション推進事務局の資料を参考にしながら、即時OA実現に向けた基本方針について詳しく検討します。

即時オープンアクセスとは

即時オープンアクセス(OA)とは、研究成果が発表されると同時に誰でも自由にアクセスできる状態を指します。従来のOAモデルでは、一定期間のエンバーゴ(閲覧制限期間)後に公開される場合が多いですが、即時OAはこの制限を設けず、論文の発表と同時に全世界に公開します。これにより、研究者や一般の人々が最新の研究成果にリアルタイムでアクセスできるようになり、学術情報の流通が劇的に改善されます【内閣府科学技術・イノベーション推進事務局, 2024】。

即時オープンアクセスのメリット

即時OAの最大のメリットは、研究成果が迅速に広く共有される点です。これにより、研究の進展が加速し、異分野間のコラボレーションが促進されます。また、研究者にとっても、自身の研究が広く認知されることで、引用数の増加や知名度の向上が期待できます。具体的には以下のようなメリットが考えられます。

1. 研究の迅速な普及と影響力の向上:

即時OAにより、研究成果が迅速に公開されるため、他の研究者や業界の専門家がそれらを迅速に参照し、引用することが可能になります。これにより、研究の影響力が飛躍的に向上します。

2. 学際的研究の促進:

即時OAは、異なる分野の研究者が他分野の最新研究に即座にアクセスできる環境を提供します。これにより、学際的研究が促進され、新たな知識の創出やイノベーションの加速が期待されます【内閣府科学技術・イノベーション推進事務局, 2023】。

3. 公共の利益への貢献:

学術研究の成果は、医療、環境、社会科学などの分野で公共の利益に直結することが多いです。即時OAにより、これらの成果が迅速に共有されることで、社会全体の福祉や政策決定に役立つことが期待されます。

4. 研究者の認知度と評価の向上:

即時OAにより、研究者の成果が広く認知されることで、その評価が向上します。特に若手研究者や新興研究者にとって、自身の研究が迅速に公開され、引用されることで、キャリアの向上に寄与します。

基本方針の策定

即時OAを実現するためには、以下の基本方針が重要です。

1. ポリシーの明確化:

学会や出版社は、即時OAに関する明確なポリシーを策定し、研究者に周知する必要があります。これには、著作権の取り扱いや、著者負担金(APC: Article Processing Charge)の設定などが含まれます。明確なポリシーは、研究者が安心して即時OAを選択できる環境を提供します【内閣府, 2024】。

2. インフラの整備:

即時OAを支えるためには、適切なデジタルインフラが必要です。リポジトリの構築や、論文のメタデータ管理、アクセスログの解析など、技術的な基盤を整備することが求められます。これにより、研究成果が迅速かつ効率的に公開され、アクセスされる環境が整います。

3. 財政的支援:

研究者がAPCを支払うことが難しい場合に備え、助成金や補助金の提供が不可欠です。政府や民間団体が連携して、研究者を支援する体制を構築することが重要です。特に、資金力のない研究者や若手研究者に対する支援が重要です【内閣府, 2023】。

4. 文化の醸成:

即時OAの普及には、研究者自身の理解と協力が不可欠です。学会や教育機関は、OAのメリットを啓発し、研究者に対する意識改革を促すことが求められます。研究者が即時OAの重要性を理解し、積極的に採用する文化を醸成することが、長期的な成功の鍵となります。

課題と解決策

即時OAの実現には、いくつかの課題が存在します。例えば、APCの高額化や、質の担保に関する懸念です。これらの課題に対しては、以下のような解決策が考えられます。

APCの適正化:

学会や出版社は、APCの適正な設定を行い、過度な負担を避ける必要があります。また、助成金制度の充実により、研究者の経済的負担を軽減することが重要です。具体的には、段階的なAPC設定や、研究成果の質に応じた柔軟な料金体系の導入が考えられます【内閣府, 2023】。

質の担保:

OAジャーナルの質を維持するためには、厳格な査読プロセスを維持することが求められます。透明性の高い査読制度の構築や、倫理規定の策定が必要です。これにより、OAジャーナルの信頼性と評判を確立し、高品質な研究成果の発表が継続的に行われる環境を整備します【内閣府, 2024】。

教育と啓発:

研究者や学術コミュニティに対する教育と啓発活動を強化することが重要です。OAのメリットや、即時OAの重要性を理解させるためのセミナーやワークショップの開催、ガイドラインの提供が必要です。また、成功事例の紹介や、即時OAを採用した研究者の声を広めることで、さらなる理解と支持を得ることができます。

技術的サポートの強化:

研究者が即時OAを利用する際の技術的なサポートを強化することも重要です。具体的には、論文投稿システムの改善や、リポジトリの利用方法に関するトレーニングの提供などが考えられます。これにより、研究者がスムーズに即時OAを利用できる環境を整備します【内閣府, 2023】。

国際的な協力:

即時OAの推進には、国際的な協力が不可欠です。各国の学術機関や政府、出版社が連携し、共通の基準やポリシーを策定することが求められます。また、発展途上国の研究者に対する支援を強化し、グローバルな学術情報の流通を促進することが重要です【内閣府, 2024】。

なぜ2023年のサミットで即時OAが議題に上がったのか

2023年のG7広島サミットで即時オープンアクセスが議題に上がった背景には、いくつかの要因が考えられます。まず、COVID-19パンデミックを通じて、研究成果の迅速な共有とアクセスの重要性が改めて認識されました。パンデミック時には、ワクチン開発や治療法の研究が急速に進められ、迅速な情報共有が生命を救う上で極めて重要であることが明らかになりました。この経験から、学術情報の即時アクセスが科学の進展に不可欠であるとの認識が広まりました【内閣府, 2024】。

また、デジタル技術の進展により、即時OAを技術的に実現するためのインフラが整いつつあります。クラウドコンピューティング、データ管理システム、オンラインリポジトリなどの技術が進化し、研究成果の即時公開がより容易かつ効率的になっています。このような技術的背景も、即時OA推進の機運を高める要因となっています。

さらに、学術コミュニティや研究資金提供機関の間で、オープンアクセスへの移行が強く求められるようになってきました。欧州連合(EU)や米国の国立衛生研究所(NIH)など、多くの主要機関がOA政策を導入し、研究成果のオープンアクセスを推進しています。これにより、即時OAの実現に向けた国際的な連携が進み、G7サミットでの議論を促す一因となりました【内閣府, 2024】。

具体的な取り組み事例

即時OAの実現に向けた具体的な取り組み事例として、以下のようなケースが挙げられます。

PLAN S: 欧州の研究資金提供機関が主導する「PLAN S」は、すべての公的資金で支援された研究成果を即時OAで公開することを目指しています。この取り組みは、即時OAの普及を大きく後押しするものであり、他の地域にも影響を与えています【PLAN S公式サイト】。

米国NIHのパブリックアクセス政策: 米国国立衛生研究所(NIH)は、2008年から研究成果をパブリックアクセスポリシーの下で公開しています。NIHの政策は、即時OAの重要性を示す一例であり、多くの研究者に支持されています【NIH公式サイト】。

日本のJ-STAGE: 日本においても、科学技術振興機構(JST)が運営する「J-STAGE」は、多くの学術雑誌を即時OAで提供しています。これにより、日本国内外の研究者が最新の研究成果に即座にアクセスできる環境が整えられています【J-STAGE公式サイト】。

まとめ

即時オープンアクセスは、学術情報の迅速かつ広範な共有を実現するための重要な手段です。その実現に向けて、明確なポリシー策定、インフラ整備、財政的支援、そして研究者の意識改革が不可欠です。これらの基本方針を踏まえ、学術界全体で協力し、即時OAの普及に向けた取り組みを進めることが求められます。

即時オープンアクセスの実現により、学術研究の発展と社会全体への貢献が促進されることが期待されています。私たちは今、学術情報の公開とアクセスに対する認識を深め、具体的なアクションを通じてこの目標に向かって進むべきだと考えられています。即時OAの実現は容易ではありませんが、その意義を理解し、共に取り組むことで、未来の研究環境をより良くする一歩となる可能性があります。

参考文献

内閣府科学技術・イノベーション推進事務局. (2023). オープンサイエンス推進基本計画. https://www8.cao.go.jp/cstp/openscience/r6_0221/hosaku.pdf

内閣府科学技術・イノベーション推進事務局. (2024). オープンアクセスに関する取り組み. https://www8.cao.go.jp/cstp/oa_240216.pdf

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