学術情報の保存において、デジタル化されたコンテンツの永続的で安全な保管は、研究者や学術機関にとって非常に重要な課題です。その中でも、PORTICOとCLOCKSSは、電子ジャーナルや電子書籍を長期的に保存するための主要なダークアーカイブの役割を担っています。これらのサービスは、学術コミュニティに向けた重要なソリューションを提供し、将来の研究者に向けてデジタルコンテンツのアクセスを保証しています。本記事では、PORTICOとCLOCKSSの違いと共通点について解説します。

PORTICOとCLOCKSSの特徴比較

PORTICOCLOCKSSは、学術情報の長期保存において重要な役割を果たす2つの主要なデジタルアーカイブサービスです。

どちらも電子ジャーナルや電子書籍を対象としており、研究者や図書館、学術機関にとって信頼性の高い保存システムを提供しています。しかし、それぞれ異なる運営方式やアクセスの仕組みを持っております。

以下の表では、PORTICOとCLOCKSSの主要な特徴を比較しています。

特徴PORTICOCLOCKSS
設立PORTICOは2002年に開発が始まり、2005年に正式にサービスを開始2006年にパイロットプロジェクトとして始まり、2009年に正式なサービスとして運用開始
保存対象電子ジャーナル、電子書籍、学術データセット電子ジャーナル、電子書籍
運営方式中央集約型のダークアーカイブシステム12の主要な学術機関で分散型のダークアーカイブ
アクセストリガーイベント時にアクセス可能トリガーイベント時にオープンアクセスとして公開
資金調達会費や寄付による運営参加図書館および出版社・学術団体からの会費と寄付金
参加出版社約1,150社約310社
参加図書館約1,290館約350館(うち国内は約70館)
トリガーイベントの例出版社がコンテンツの提供を停止した場合、出版社の廃業、タイトルの中止、大規模な障害などコンテンツが完全に削除された場合や提供終了の際など
トリガーイベントで公開されたタイトル数約210約70
保管している電子ジャーナルのタイトル数約41,000タイトル約12,000タイトル
保管している電子書籍のタイトル数約2,345,000タイトル(J-STAGE含む)約75,000タイトル
保管されたデジタルコレクション数約450コレクションデータなし
PORTICOとCLOCKSSの特徴比較

PORTICOとCLOCKSSの共通点

PORTICOとCLOCKSSは、学術情報の長期保存を目的とする代表的なデジタルアーカイブサービスです。

どちらも、災害や出版社の業務停止といったリスクから学術情報を守り、将来の研究者や学生に向けてデータのアクセスを確保することを目指しています。

両者は電子ジャーナルや電子書籍の保存を中心に、世界中の図書館や出版社と連携して運営されており、信頼性の高い保存環境を提供しています。しかし、アプローチや運営モデルに若干の違いがある一方で、いくつかの重要な共通点も存在しています。以下に、PORTICOとCLOCKSSの主な共通点を整理してご紹介します。

共通点説明
目的両者とも電子ジャーナルの長期保存を目的
運営主体大学図書館や学術出版社の協力で運営
トリガーイベント特定の条件(出版社の倒産、戦争など)が発生した際にコンテンツへのアクセスを提供
参加形態図書館と出版社の両方が参加可能
資金調達会費や寄付によって運営
国際性世界規模で運営されており、国際的な参加を求めている
デジタル保存電子ジャーナルなどのデジタルコンテンツを保存対象
学術コミュニティ支援将来の研究者や学生のためにコンテンツへのアクセスを確保することを目指す
PORTICOとCLOCKSSの共通点

これらの共通点により、PORTICOとCLOCKSSは学術情報の長期保存とアクセス保証において重要な役割を果たしています。

両サービスとも、出版社の倒産や戦争などのトリガーイベントが発生した場合に、保存されたコンテンツへのアクセスを提供する仕組みを持っています。


参考

CLOCKSS. (n.d.). Retrieved September 5, 2024, from https://clockss.org/

PORTICO. (n.d.). Retrieved September 5, 2024, from https://www.portico.org/

時実, 象一. (2008). 電子ジャーナルの長期保存: LOCKSSとPortico. 情報の科学と技術, 58(2), 84-88. https://doi.org/10.18919/jkg.58.2_84

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学術情報発信ラボ 執筆・編集チーム

学術情報発信に携わる編集チームとして、長年にわたり学術出版に関する深い知識と実績を有する。国内の数十誌にわたる学術雑誌の発行サポート経験を活かし「学術情報発信ラボ」の執筆チームとして、研究者や編集者に向けた最新のトピックや、研究成果の迅速な発信に貢献する情報を発信している。

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