著者最終稿とはどのような原稿でしょうか?この原稿版はグリーンオープンアクセス(Green OA)でよく利用され、機関リポジトリで公開されることが一般的です。本記事では、査読後の修正内容や出版社版との違い、エンバーゴ期間などの公開制約、さらにグリーンOAにおける役割について詳しく解説します。

著者最終稿とは?

著者最終稿(Author's Accepted Manuscript, AAM)」とは、学術論文が査読(ピアレビュー)を経て、最終的に受理されたバージョンのことを指します。

このバージョンは、査読者からのフィードバックや修正提案を著者が反映し、採択後、学術誌の編集部に提出した最終的な原稿です。

学術出版工程のなかでの著者最終稿

学術出版の一般的な出版工程は以下のように進行します。出版工程で査読が終了し、受理を決定したときの原稿データが著者最終稿となります。

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投稿

著者が論文を投稿システムにアップロードします。

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初期チェック
査読者選定

編集事務局・編集担当者にて初期チェックを行い、適切な査読者にアサインします。

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査読プロセス

選定された査読者が論文を評価し、コメントを提供します

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著者による修正

必要に応じて、著者が査読コメントに基づいて論文を修正します。

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編集長・担当編集委員の採否判断

査読結果に基づいて、編集者が論文の採否や修正の必要性を判断します。

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最終確認・受理

修正された論文を編集長・担当編集委員が最終確認し、受理を決定します。

受理決定した時の最終原稿が著者最終稿となります

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出版前の準備

受理された論文の校正、レイアウト調整、最終チェックを行います

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出版

論文が正式に出版され、読者がアクセス可能になります。

著者最終稿の特徴とは

著者最終稿については、具体的には以下のような特徴があります:

1. 査読後の修正が反映されている

  • 著者最終稿は、査読(ピアレビュー)のプロセスを通じて、学術的な評価やフィードバックを受けた後に著者が修正を加えたものです。そのため、内容的には公式に発表される論文とほぼ同じです。

2. フォーマットやレイアウトは出版社版と異なる

  • 著者最終稿は、学術団体や学術出版社のレイアウトやデザインが適用される前の状態です。
  • したがって、正式な出版物で見られるフォント、ページ番号、ロゴ、ヘッダー・フッターなどは含まれていません。通常、著者の個人的なフォーマットもしくは学会、学術出版社が指定するフォーマット(WordファイルやLaTeXファイルなど)が使われています。

3. 最終的な内容は出版バージョンと同一

  • 記載されている内容、図表、データなどは出版される最終版と同一であることが一般的です。
  • 科学的な結果や解釈、結論に違いはありませんが、ページ番号やレイアウトなどの形式面は異なります。

4. 公開のための制約がある場合がある

  • 著者最終稿を公開する場合、多くの海外学術出版社のポリシーによってはエンバーゴ期間が1年-2年ほど設定されることがあります。学術出版社はこのエンバーゴ機関で購読料を読者から頂戴し、この期間が終了するまでは、著者はこのバージョンをリポジトリなどで公開できません。
  • また、学術出版社の場合で、記事が購読料モデルの場合、公開には著作権表示や引用情報を含める必要があることがあります。

5. グリーンオープンアクセスでよく利用される

  • グリーンOA(Green Open Access)の一環として、著者最終稿は機関リポジトリや学術リポジトリに公開されることが多いです。出版社の最終版ではなく、著者最終稿を公開することで、査読済みの研究成果を広く共有することが可能になります。

まとめ

著者最終稿とは、査読後に修正された最終的な原稿であり、内容は出版版と同一ですが、学会誌、出版社のフォーマットが適用される前の状態です。

この記事を書いた人

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学術情報発信ラボ 執筆・編集チーム

学術情報発信に携わる編集チームとして、長年にわたり学術出版に関する深い知識と実績を有する。国内の数十誌にわたる学術雑誌の発行サポート経験を活かし「学術情報発信ラボ」の執筆チームとして、研究者や編集者に向けた最新のトピックや、研究成果の迅速な発信に貢献する情報を発信している。

専門分野は学術出版、オープンアクセス、学術コミュニケーションであり、技術的な側面と学際的なアプローチを交えた解説が特徴。

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