学術研究や情報収集においては、さまざまな資料が利用されます。これらの資料はそれぞれ異なる目的や特性を持っており、引用や参照の際にはその違いを理解することが大切です。この記事では、一般的なものから近年、引用され始めた資料まで24種類を紹介し、それぞれの特徴を簡単に解説します。「引用される情報ってどのような種類があるの?」という質問にこの記事を読めばわかります。

主な引用資料の種類

参考文献、引用文献等で引用される資料を24種類紹介します。

学術研究における引用資料の種類

① 雑誌

  • 説明:国内外で定期的に発行される出版物で、商業出版や、国内学会誌、論文誌などで様々な記事や論文が掲載されています。
  • 種類:学術雑誌、一般雑誌、業界誌など。
  • :「Nature」や「Science」などの著名な学術雑誌。
  • 特徴
    • 最新の研究成果や専門的な情報を得るのに適しています。
    • 電子ジャーナルとしてオンラインでアクセスできるものも増加中です。

② 雑誌へ投稿中の論文

  • 説明:雑誌に掲載するために査読中でまだ公開されていない論文のことを指します。
  • 重要点:研究情報を含むが、専門家による査読(評価)が完了していない点に注意が必要です。
  • :arXivなどのプレプリントサーバーで公開される論文も含みます
  • 注意点:引用する際は、論文が正式に出版された後に確認することが重要です。

③ 図書

  • 説明:単行本として出版された書籍のことです。
  • 種類:専門書、教科書、一般書など。
  • 特徴:特定のテーマについて体系的に学ぶのに適しており、Amazonのkindle等での電子書籍も増ええています。

④ レポート

  • 説明:特定のテーマについて調査や研究結果をまとめた報告書です。
  • 発行元:政府機関、研究所、企業などが発行します。
  • :「国民生活に関する世論調査」(内閣府)や「世界経済見通し」(IMF)など。
  • 特徴:特定の課題や現状分析について詳細な情報を得られ、多くの場合、オンラインで公開されています。

⑤ 学位論文

  • 説明:学位取得のために書かれる専門的な研究論文です。
  • 種類:紀要や修士論文や博士論文が該当します。
  • :各大学の機関リポジトリで公開されている論文。

⑥ 会議資料

  • 説明:学会や会議で発表された論文や資料、およびそれらに関連する文書のことです。
  • 発行元:学会や研究機関が発行します。
  • :学会のプロシーディングス(会議録)、発表スライド、大会プログラム、講演予稿集
  • 特徴
    • 最新の研究成果やトピックについての情報が得られます。
    • 多くの場合、未発表の研究内容や速報性の高い情報が含まれます。

⑦ プレプリントサーバ

  • 説明:正式な査読や出版前に公開される論文の草稿です。
  • 重要性:研究者が早期にフィードバックを得るために利用されます。
  • :arXivやbioRxivなどのプレプリントサーバー。
  • 特徴:査読を経ていないため、内容の信頼性には注意が必要です。

⑧ 特許文献

  • 説明:発明や技術に関する権利を保護するための公的文書です。
  • 発行元:特許庁や関連機関が発行します。
  • :特許番号が付与された発明の詳細な説明書。
  • 特徴:技術的な情報が豊富で、研究開発の参考になります。

⑨ 規格文書

  • 説明:製品や手順の標準化を定めた文書のことです。
  • 発行元:各種規格団体(JIS、ISOなど)が発行します。
  • JIS規格やISO規格に関する文書。
  • 特徴
  • 業界標準を理解するために重要で、製品開発や品質管理に役立ちます。

⑩ ウェブサイト/ウェブページ/ブログ

  • 説明:インターネット上で公開されている情報源です。
  • 種類:個人ブログ、企業サイト、学術機関のウェブページなど。
  • :Wikipediaや研究機関の公式サイト。
  • 特徴:情報が迅速に更新される一方で、信頼性の確認が必要です。

⑪ メーリングリスト/電子掲示板

  • 説明:オンライン上での情報交換や議論の場です。
  • 利用方法:特定のテーマに関する情報や意見を共有します。
  • :専門分野のメーリングリストやRedditのサブレディット。
  • 特徴:最新のトピックや研究動向についての情報が得られますが、情報の信頼性には注意が必要です。

⑫ データベース

  • 説明:体系的に整理された情報の集合体を指します。
  • 種類:学術データベース、商業データベースなど。
  • PubMed、JSTOR、Web of Scienceなどの学術データベース。
  • 特徴
  • 大量の情報を効率的に検索・取得でき、研究において重要な情報源となります。

⑬ コンピュータプログラム

  • 説明:特定の作業を実行するためのソフトウェアのことです。
  • 種類:アプリケーションソフト、システムソフトなど。
  • :RやPythonのライブラリ、MATLABなど。
  • 特徴:データ分析やシミュレーションなど、研究活動において幅広く利用されます。

⑭ 新聞記事

  • 説明:日々の出来事や社会の動向を伝える一次資料です。
  • 発行元:新聞社が発行します。
  • :「朝日新聞」や「読売新聞」の記事。
  • 特徴:時事問題や社会的なトピックについての情報を迅速に得られますが、情報の正確性には注意が必要です。

⑮ 政府刊行物・公文書

  • 説明:国や地方自治体が発行する公式文書や報告書です。
  • 発行元:政府機関や地方自治体。
  • :政府白書や統計年鑑。
  • 特徴:公的なデータや政策に関する情報が得られ、信頼性が高いです。

⑯ 統計資料

  • 説明:各種統計データを集約した資料です。
  • 発行元:政府機関、研究機関、統計局など。
  • :総務省統計局の「国勢調査」や「経済センサス」。
  • 特徴:データに基づく分析や研究を行う際に重要な情報源です。

⑰ 視聴覚資料

  • 説明:映画、テレビ番組、音楽、ポッドキャストなどの非文字媒体です。
  • 種類:ドキュメンタリー、講義動画、音声コンテンツなど。
  • :TED TalksやNHKのドキュメンタリー番組。
  • 特徴:視覚や聴覚を通じて情報を得られ、理解を深めるのに役立ちます。

⑱ アーカイブ資料

  • 説明:歴史的文書や未公開資料などの一次資料です。
  • 発行元:図書館、博物館、アーカイブ機関など。
  • :国立公文書館に所蔵されている歴史的文書。
  • 特徴:歴史的な研究や文化的な分析において貴重な情報源です。

⑲ ソーシャルメディア投稿

  • 説明:Twitter、Facebookなどのソーシャルメディア上の投稿です。
  • 種類:個人の意見、ニュース、情報共有など。
  • :研究者のTwitterアカウントからの最新情報。
  • 特徴:リアルタイムでの情報収集が可能ですが、情報の信頼性には注意が必要です。

⑳ インタビュー

  • 説明:研究者が直接行ったインタビューや公開されているインタビュー記録です。
  • 重要性:専門家の意見や経験を直接聞くことができる貴重な情報源です。
  • :学術雑誌やポッドキャストでの専門家インタビュー。
  • 特徴:研究テーマに関連する深い洞察を得るのに役立ちます。

㉑ 私信・個人的なコミュニケーション

  • 説明:研究に関連する個人的な手紙やメールのやり取りです。
  • 重要性:研究者同士の非公式な情報交換や意見の共有が行われます。
  • :研究仲間とのメールでのやり取り。
  • 特徴:公開されていない情報やアイデアの共有が可能ですが、正式な引用には向かないことが多いです。

㉒ プレスリリース

  • 説明:企業や組織が発表する公式声明や情報提供です。
  • 発行元:企業、団体、政府機関など。
  • :新製品発表のプレスリリースや研究成果の公表。
  • 特徴:最新の情報や動向を迅速に知ることができ、メディアに掲載されることが多いです。

㉓ 地図

  • 説明:地理情報を含む各種地図資料です。
  • 種類:地形図、行政区画図、テーマ別地図など。
  • :国土地理院の地形図や観光地図。
  • 特徴:地理的な情報を視覚的に理解するのに役立ち、研究や分析において重要な資料です。

㉔ 法令・判例

  • 説明:法律文書や裁判所の判決文です。
  • 発行元:政府機関、裁判所など。
  • :日本の法律や最高裁判所の判決文。
  • 特徴:法律や規制に関する正確な情報が得られ、法的な研究や実務において不可欠です。

学術研究や論文執筆において、引用資料の適切な扱いは非常に重要です。引用資料には様々な種類があり、それぞれが研究や学習を進める上で重要な役割を果たしています。

まず、投稿を予定している学術雑誌のスタイルガイド(投稿規定)を確認することが極めて重要です。各雑誌には独自の引用形式や参考文献の記載方法があり、これらを遵守することが求められます。投稿規定を事前に確認し、それに沿って引用や参考文献リストを作成することで、査読プロセスをスムーズに進めることができます。

また、引用資料については常に最新の情報源や引用方法に注意を払う必要があります。

特に、情報技術の急速な発展に伴い、新たな形態の資料が今後も登場する可能性が高いことに留意が必要です。例えば、人工知能が生成したコンテンツや、仮想現実(VR)・拡張現実(AR)を用いた資料など、従来の分類に当てはまらない新しい形式の情報源が出現する可能性があります。これらの新しい資料形態に対しても、適切な引用方法を検討し、必要に応じて学術雑誌の編集部に確認を取ることが重要です。重要なのは、どのような形態の資料であっても、その信頼性や適切性を慎重に評価し、研究倫理に基づいて正しく引用することです。

主要なスタイルガイド

学術論文でよく用いられるスタイルガイドには、以下のようなものがあります

主要なスタイル

  • APAスタイル(アメリカ心理学会)
  • MLAスタイル(アメリカ現代語学文学協会)
  • AMAスタイル(アメリカ医学会)
  • シカゴスタイル
引用文献スタイル一覧:スタイル別の書き方を徹底解説

引用文献のスタイルは学術論文作成の要です。代表的なバンクーバー方式とハーバード方式は、それぞれ独自の引用方法を持ちます。バンクーバー方式は本文中に通し番号を付け、ハーバード方式は著者名と発行年を表記します。選択は分野や目的によりますが、正確な引用は論文の信頼性を高めます。各スタイルの特徴や適用分野を理解することで、より効果的な論文作成が可能になります。

これらの引用スタイルは、それぞれの学問分野や出版物で広く使用されています。例えば、APAスタイルは心理学だけでなく、教育学や社会科学、自然科学、人文科学など幅広い分野で活用されています

スタイルガイドの重要性

スタイルガイドを遵守することは、単に形式を整えるだけでなく、学術コミュニティ内での効果的なコミュニケーションを促進します。

統一された形式は、読者が情報を容易に理解し、引用元を確認することを可能にします。また、適切な引用は著作権の尊重や剽窃の防止にもつながります。

最後に、スタイルガイドは定期的に更新されることがあるため、常に最新版を参照することが重要です。また、特定の学術雑誌や機関が独自のスタイルガイドを持っている場合もあるので、投稿や発表の際には必ず確認するようにしましょう。

参考

科学技術振興機構. (2011). 科学技術情報流通技術基準 (SIST) ハンドブック. https://web.archive.org/web/20121208220639/http://sti.jst.go.jp/sist/pdf/SIST_booklet2011.pdf