クリエイティブコモンズライセンス(CCライセンス)は、著作物の共有を推進し、著者と利用者双方の利益を保護するために設計されました。この記事では、クリエイティブコモンズライセンス(CCライセンス)の概要から利用方法までを詳しく解説し、それぞれの種類が持つ特徴や法的な影響についても掘り下げます。

クリエイティブコモンズライセンス(CC)とは?

クリエイティブ・コモンズ(CCライセンス)とは、著作物を使う人がどの範囲で自由に使えるかを、著作者が決められるライセンスです。たとえば、「改変して利用OK」や「商用利用不可」といった条件を簡単に伝えることができます。

クリエイティブ・コモンズ(Creative Commons:CCライセンス)は、非営利団体によって作られ、著作権者が自分の作品を柔軟に公開し、利用者に特定の条件のもとで利用を許可することができます。このライセンスにより、著作権者は作品の共有や利用を自らの意図に応じてコントロールできるようになります。

クリエイティブコモンズの歴史と背景

クリエイティブ・コモンズライセンス(CCライセンス)は2001年に設立され、著作物の共有を推進するためのツールとして、2002年に最初のCCライセンスがリリースされました。

設立の背景には、インターネットの普及によって情報の共有が容易になった一方で、従来の著作権法がその変化に適応しきれていないという問題意識がありました。クリエイティブコモンズは、この問題を解決するために、著作権者が自分の意図に沿って作品を公開できるように支援することを目的としています。

クリエイティブコモンズライセンスのアイコンの意味

クリエイティブコモンズライセンスは、CCのアイコンを除いた4つの基本要素を組み合わせた6種類のライセンス形態を提供しています。それぞれのライセンスは、作品の利用に関する異なる条件を設定しています。

アイコンの意味

名称アイコンアイコンの説明
 CC  CC(Creative Commons):作品がクリエイティブ・コモンズライセンスで提供されていることを示します。クリエイティブコモンズを利用する場合は必ずこのマークが記載されています。
 BY  BY(Attribution):作品の利用者は、著作者のクレジットを表示しなければならないことを示します。
 NC  NC(Non-Commercial):作品を商業目的で利用してはいけないことを示します。
 ND  ND(No Derivatives):作品を改変せず、そのままの形で利用する必要があることを示します。
 SA  SA(Share Alike):改変した場合でも、同じライセンスで公開しなければならないことを示します。
クリエイティブコモンズライセンス(CCライセンス)のそれぞれのマークの意味

クリエイティブコモンズライセンスの基本6種類のライセンス

クリエイティブコモンズライセンスの基本的な6種類のライセンス形態をについて詳しく説明します。下記はバージョン4.0での説明になります。

CC BY:表示

CC BY(表示)ライセンスは、クリエイティブコモンズライセンスの中で最も寛容なライセンスです。このライセンスでは、著作権者のクレジットを表示することを条件に、作品を自由にコピー、配布、そして改変することができます。

商用利用も可能で、他のライセンス条件を課さない限り、作品の改変後の再配布も許可されます。

著作物を利用者が再利用する際、守るべきこと

  • 著作者のクレジット(著作権者情報)を表記する必要がある
  • 改変・コピー、配布、2次加工しても良い
  • 営利・非営利目的どちらでも利用できる

CC BY-NC:表示-非営利

CC BY-NC(表示-非営利)ライセンスは、著作権者のクレジットを表示し、非営利目的でのみ作品を利用することを許可します。このライセンスの下では、作品を改変したり、複製したりすることは可能ですが、それらの行為はすべて非営利目的でなければなりません。

著作物を利用者が再利用する際、守るべきこと

  • 著作者のクレジット(著作権者情報)を表記する必要がある
  • 改変・コピー、頒布してもよい
  • 非営利目的のみに限る

CC BY-SA:表示-継承

CC BY-SA(表示-継承)ライセンスは、著作権者のクレジットを表示し、改変後の作品に同じライセンスを適用することを条件に作品を利用できます。これは、オープンソースソフトウェアのライセンス形態に似ており、改変された作品も同様に自由に利用できる状態に保たれます。

著作物を利用者が再利用する際、守るべきこと

  • 著作者のクレジット(著作権者情報)を表記する必要がある
  • 改変した場合は元の著作物と同じライセンスで公開する必要がある
  • 営利・非営利目的どちらでも利用できる

CC BY-NC-SA:非営利-継承

CC BY-NC-SA(表示-非営利-継承)ライセンスは、著作権者のクレジットを表示し、非営利目的でのみ作品を利用することを許可します。また、改変後の作品には同じライセンスを適用することが求められます。このライセンス下では、改変作品も非営利目的で自由に共有されることが必要です。

著作物を利用者が再利用する際、守るべきこと

  • 著作者のクレジット(著作権者情報)を表記する必要がある
  • 改変した場合は元の著作物と同じライセンスで公開する必要がある
  • 非営利目的のみに限る

CC BY-ND:表示-改変禁止

CC BY-ND(クリエイティブ・コモンズ 表示-改変禁止)ライセンスは、作品がその原形を保ったまま自由に再配布されることを許可しつつ、作品の改変を禁止するライセンスです。著作権者は自身の作品に対するクレジットの表示を条件に設定しています。このライセンスのもとで、利用者は作品をそのままの形で配布することが可能ですが、商用・非商用問わず作品の改変は許されません。

著作物を利用者が再利用する際、守るべきこと

  • 著作者のクレジット(著作権者情報)を表記する必要がある
  • 著作物を改変して頒布することはできない
  • 営利・非営利目的どちらでも利用できる

CC BY-NC-ND:表示-非営利-改変禁止

CC BY-NC-ND(表示-非営利-改変禁止)ライセンスは、クリエイティブコモンズライセンスの中で最も制限の厳しいものです。このライセンスでは、著作権者のクレジットを表示し、非営利目的での利用に限り作品をコピーや配布することができますが、作品の改変や商用利用は一切禁止されています。

著作物を利用者が再利用する際、守るべきこと

  • 著作者のクレジット(著作権者情報)を表記する必要がある
  • 著作物を改変しないことが条件で頒布することができる
  • 非営利目的のみに限る

クリエイティブコモンズライセンスのバージョンについて

バージョンについて

クリエイティブ・コモンズライセンス(CCライセンス)にはバージョンがあり、そのバージョンごとに少しずつ内容が違います。例えばCC-BY2.1とCC-BY4.0では同じCC-BYでも厳密にいうと違います。現在では最新のバージョンを利用していることが多いですがバージョンの違いを把握することはとても重要です。

各バージョン(1.0、2.0、3.0、4.0)における登場年、主な変更点、種類ごとの違いを表にまとめました。

クリエイティブコモンズライセンスの国際的なバージョンについて

バージョン登場年主な変更点種類ごとの違い
1.02002年初めてのCCライセンスバージョンとして登場。初期の基本要素としてBY、NC、ND、SAを含む。
2.02004年法的明確性の向上、国際化のための取り組み。各国の法律に合わせた「ポート」バージョン※1が導入されました。
3.02007年グローバルな適用範囲の拡大、国際的な互換性の強化。「ポート」バージョンと「ユニバーサル」バージョン※1が選択可能に。
4.02013年国際的な統一性の向上、データベース権の保護強化。より明確な言語でのライセンス表現、データベース権に対応。全世界共通の単一バージョンとして設計。
クリエイティブコモンズライセンス(CCライセンス)バージョンの違いで何が違うか

ポートバージョンとユニーバーサルバージョンとは?

※1「ポート」バージョンとは:クリエイティブ・コモンズライセンスが特定の国や法的管轄に適合させられたバージョンのことを指します。各国の著作権法は異なるため、クリエイティブ・コモンズはそれに対応するために「ポート(移植)」を行い、その国の法制度に合うようにライセンスを調整します。ポートバージョンが導入されることで、より国際的に対応しやすくなり、ライセンスがその国の著作権法に従って適用されます。

※2 「ユニバーサルバージョン」とはクリエイティブ・コモンズライセンスが特定の国や地域の法制度に依存せず、国際的に利用できるバージョンのことです。これは、特定の国の著作権法に最適化された「ポートバージョン」に対して、どの国でも使えるように設計されたものです。

ユニバーサルバージョンは国際的な共通基準に基づいており、特定の国の法制度に基づかないため、国境を越えた利用に適していますが、詳細な法的適合はポートバージョンほどではない場合があります。

各バージョンでは、特に国際的な法律環境への対応や、技術的な進化に伴う利用条件の改善が図られてきました。4.0では、特にデジタルコンテンツの普及に対応したアップデートが行われています。

日本語版クリエイティブコモンズライセンスバージョン(日本語版CCライセンスバージョン)

以下に、日本語で提供されているCCライセンスのバージョンについて、登場年と主な変更点を表にまとめています。

バージョン登場年主な変更点
2.02003年初の日本語版ライセンス。日本法に準拠し、各国の法律に合わせたライセンスとして提供されました。
2.12004年日本法に準拠したライセンスとしての明確化と、より現地法に適応した内容の強化。
4.02015年- 読みやすさの向上と条項の整理
ライセンス対象が「作品」から「マテリアル」に変更され、データベースなど広範囲に適用可能に。
- ライセンス違反後の是正による自動許諾の復活。
- 各国ごとのバージョンを廃止し、単一の「international(国際)」ライセンスへ移行。公式翻訳として提供。
日本語版クリエイティブコモンズライセンス(CCライセンス)バージョンはどのようになっているのか

日本語では、バージョン2.0、2.1、4.0が存在します。 2.0は2003年、2.1は2004年、4.0は2015年に発行されました。 バージョン4.0では、2.1に以下の改訂が行われております。

バージョン4.0の改訂内容

  • 読みやすさの向上: 不明確で実行が難しい条項が整理され、全体が読みやすくなりました。
  • ライセンス対象の変更: ライセンスの対象が「作品(Work)」から「マテリアル(Material)」に変更され、データベースなど幅広いコンテンツに対応できるようになりました。
  • 違反後の是正期間: ライセンス違反があった場合でも、違反に気づいてから30日以内に是正すれば、許諾が自動的に再取得できるようになりました。
  • 国際的な統一性の強化: 日本の国内法も含めて「国際的(international)」という単一のライセンスで対応するよう変更され、各国ごとのバージョンがなくなりました。
  • 公式翻訳の位置づけ: 各言語で提供されるライセンスは公式な翻訳という位置づけになり、国際的な法的統一性が保たれています。
  • グローバル対応の強化: よりグローバルに対応したライセンスの利用が可能になり、どの言語でも同一のライセンス内容が適用されるようになりました。

これらの改訂により、CCライセンス4.0は、より幅広いコンテンツと国際的な使用に対応し、法的な明確性と利便性を向上させています。

これにより、よりグローバルに対応したライセンスの利用が可能になりました。

クリエイティブコモンズライセンスを利用しているサービス

クリエイティブ・コモンズライセンス(CCライセンス)は、多くのメディア形式に適用可能で、研究データや、論文、画像、動画、テキスト、など様々な作品に使用されています。以下では、クリエイティブコモンズライセンスを利用している具体的なサービスについて解説します。

画像や動画サービスでの利用

クリエイティブ・コモンズライセンス(CCライセンス)を適用した画像や動画は、ライセンス条件に従って自由に利用することができます。

たとえば、CC BYライセンスの画像はクレジットを表示するだけで使用可能であり、CC BY-NCライセンスの場合は非営利目的に限られます。利用者はライセンスの条件を確認し、適切に利用する必要があります。

サービス分類サービス名説明
動画プラットフォームYouTubeクリエイターが動画にCCライセンスを適用可能。CCライセンス付き動画の検索機能あり。
動画プラットフォームVimeoクリエイターが作品にCCライセンスを適用可能。ライセンス条件に従って利用可能。
フリー百科事典Wikipediaクリエイティブ・コモンズ表示-継承ライセンス (CC BY-SA) の下で公開されており、ライセンス条件に従って自由に利用可能。
アーカイブInternet Archive書籍、音楽、映像などの多くのコンテンツがCCライセンスで利用可能。
検索エンジンOpenverse (旧CC Search)CCライセンスの付与された素材を検索可能。
写真共有サイトFlickrユーザーが写真にCCライセンスを適用可能。CCライセンス付き画像の検索機能あり。
教育リソースOpenStax無料のオープンな教科書を提供。多くの教材がCCライセンスで公開。
学術ジャーナルPLOSオープンアクセスの科学ジャーナル。すべての論文がCCライセンスで公開。
クリエイティブコモンズライセンスを利用しているサービス

これらのサービスは、Creative Commonsライセンスを活用することで、コンテンツの共有と再利用を促進し、オープンな文化の発展に貢献しています。

クリエイティブ・コモンズライセンス(CCライセンス)は、このようなサービスでも著作権者が自身の作品を保護しながら、利用者に対して一定の利用権を与えることを目的とされています。

著作権保護の範囲

クリエイティブコモンズライセンスを利用しているサービスは、著作権法の下で作品を保護しつつ、著作権者が自由にライセンス条件を設定できる仕組みを提供します。これにより、著作権者は作品の不正使用を防ぎつつ、作品の共有を促進できます。

許諾と制限

クリエイティブコモンズライセンスでは、著作権者が許諾する利用条件と制限を明確にすることが可能です。利用者は、これらの条件を理解し、遵守することで、著作物を合法的に利用できます。

作品の改変と利用者の権利

クリエイティブ・コモンズライセンス(CCライセンス)を利用することで、著作権者は作品の改変に関する権利を制限したり、許可したりすることができます。

利用者は、ライセンス条件に基づいて、改変可能な範囲内で作品を活用することが求められます。

著作権との関係

クリエイティブ・コモンズライセンス(CCライセンス)は著作権法を基盤にしており、著作権者の権利を完全に放棄するものではありません。むしろ、著作権者が自身の作品の利用をどのように許可するかを柔軟に選択できるようにするものです。

著作権法が著作物の全ての利用を自動的に著作権者に保護されるようにするのに対し、CCライセンスは著作権者が特定の利用条件を設定することを可能にし、利用者はその条件のもとで作品を使用することができます。

クリエイティブ・コモンズライセンスのメリットは、著作権者と利用者双方に広がります。

著作権者は自身の作品に対して柔軟に権利を設定することができ、たとえば作品の商用利用を禁止したり、改変を許可する条件を指定することができます。このような明確なルール設定により、著作権者は自分の作品がどのように使用されるかをコントロールしながら、広範囲にわたって作品を共有することが可能になります。

一方、利用者にとっては、CCライセンス付きの作品を使用する際のルールが明確であるため、安心して作品を利用することができます。

特に教育や研究の分野では、CCライセンス付きの教材やデータを自由にアクセスし使用することができるため、知識の普及と共有が促進されます。

さらに、クリエイティブ・コモンズライセンスは、デジタル時代の新たなクリエイティブカルチャーを支える基盤となっています。インターネットを通じて作品が世界中に広がりやすくなっている今、CCライセンスは作品の可視性を高め、より多くの人々に届ける手助けをしています。その結果、著作権者は新たなオーディエンスを獲得し、その作品がもたらす影響を拡大することができます。

まとめ

クリエイティブ・コモンズライセンス(CCライセンス)は、著作権の枠組みを超えて、作品の自由な利用と共有を促進する重要なツールです。

ライセンスの種類や利用方法を理解し、適切に活用することで、著作物の利用範囲を広げ、クリエイティビティを高めることができます。著作権者と利用者の双方が利益を享受し、より良い社会の形成に貢献するために、CCライセンスの理解と活用を進めていきましょう。

この記事を書いた人

学術情報発信ラボ 編集チームのアバター

学術情報発信ラボ 執筆・編集チーム

学術情報発信に携わる編集チームとして、長年にわたり学術出版に関する深い知識と実績を有する。国内の数十誌にわたる学術雑誌の発行サポート経験を活かし「学術情報発信ラボ」の執筆チームとして、研究者や編集者に向けた最新のトピックや、研究成果の迅速な発信に貢献する情報を発信している。

専門分野は学術出版、オープンアクセス、学術コミュニケーションであり、技術的な側面と学際的なアプローチを交えた解説が特徴。

最近の投稿