注意点

Crossrefは研究助成機関の識別子であるOpen Funder Registryを廃止し、ROR(Research Organization Registry)に統合する長期計画を2023年9月に発表しました。

https://www.crossref.org/blog/open-funder-registry-to-transition-into-research-organization-registry-ror

最新の進捗状況については、CrossrefやRORの公式サイトで最新情報をご確認ください。「学術情報発信ラボ」のRORについての記事もご確認ください。

Open Funder Registryは、研究助成機関を一元的に識別し、資金提供の透明性を向上させるために開発されたデータベースです。本記事では、Open Funder Registryの利用方法やFundRefとの違い、Crossrefとの関係、登録されたデータの内容、利用メリットなど、包括的に解説します。

Open Funder Registryとは何か?

Open Funder Registry(OFR)とは、世界中の研究に資金を提供する団体の情報を、誰でも簡単に確認できるようにしたデータベースのことです。

これにより、どの研究にどの資金提供者が関わっているのかが分かりやすくなり、研究の透明性が高まります。例えば、ある研究が特定の助成金を受けた場合、その助成金を出した団体の名前やIDが記録されます。この情報を使うことで、資金提供者や研究者、出版社などが、そのお金がどのように使われ、どのような成果が生まれたのかを追跡できる仕組みです。

Open Funder Registry(OFR)は、もともとは「FundRef」という名前で運営されていましたが、現在はCrossrefという国際的な学術情報を管理する組織によって運営されています。このデータベースを活用することで、研究者や出版社は資金提供者を特定し、その情報を研究発表の中に盛り込むことができます。また、これにより、誰でもその研究がどの資金によって行われたのかを簡単に知ることができるようになります。

Open Funder Registryの重要性と目的

OFRの目的は、研究資金の透明性を向上させることです。資金提供者の情報を明示することで、以下のようなメリットが得られます:

  • 研究の信頼性の向上:資金源を明確にすることで、利益相反や偏りの可能性を減少させ、研究の信頼性を高めます。
  • 研究成果の追跡:資金提供者は、資金がどのように使用され、どのような成果が生まれたかを把握できます。
  • 学術出版物の透明性:資金の出どころを明確にすることで、研究の透明性が向上し、読者はどのような資金が使われているかを容易に確認できます。

Open Funder Registryの仕組みと運用方法

OFRは、研究者が研究資金の提供を受けた際に、資金提供者の情報(資金提供者の名前、ID、助成金番号など)を論文や発表に明記することで機能します。Crossrefは、この資金提供データをメタデータの一部として管理し、出版物に関連する資金提供者を追跡するシステムを提供しています。資金提供者のデータは定期的に更新され、新しい資金提供者が追加されるとともに、既存のデータの精度も確認されます。

このデータは、CSVファイルやRDF形式で自由にダウンロードでき、APIを介してプログラム的にアクセスすることも可能です。

学術研究における透明性向上の必要性

研究資金の透明化が求められる背景には、以下の要素があります:

  • 利益相反の防止:資金の出所が不明確な場合、研究に偏りが生じるリスクがあります。OFRは、研究の公正性を担保するために重要な役割を果たします。
  • グローバルな透明性の強化:近年、国際的な学術界では、透明性と研究の公正性を重視する動きが強まっています。OFRは、その一環として資金提供情報の開示を支援します。

Open Funder Registryの活用事例

OFRは多くの大学や研究機関、出版社によって活用されています。具体的な活用例としては、次のようなものがあります:

  • 大学や研究機関:OFRを活用して、自機関の研究者が受けた助成金や資金提供の内容を把握し、成果の追跡に役立てています。
  • 出版社:出版社は、論文に記載された資金提供情報をもとに、資金提供者が特定の研究分野にどの程度関与しているかを確認するためにOFRを使用しています。

Open Funder Registryを導入するためのステップ

OFRを導入する際には、次のステップを踏む必要があります:

  1. 資金提供者情報の収集:研究者や著者から資金提供者名や助成金番号を収集します。これには、論文の謝辞や脚注に記載されている情報を利用します。
  2. OFRとの照合:収集した資金提供者情報をOFRに登録されているIDと照合し、一致するIDを見つけます。
  3. メタデータの送信:資金提供者名、ID、助成金番号を含めたメタデータをCrossrefに送信します。これにより、資金提供者と研究成果の関連性が明確になります。

Open Funder Registryの課題と今後の展望

OFRは有用なツールですが、いくつかの課題も存在します。特に、次の点が今後の改善対象となります:

  • データの更新頻度:OFRのデータは定期的に更新されますが、データの正確性を保つためには、さらなる頻度と精度の向上が必要です。
  • 国際的な対応:OFRが対応する資金提供者の範囲は広がっていますが、すべての国や地域の資金提供者を網羅するには、さらなる拡大が求められます。

まとめ

Open Funder Registryは、研究資金の透明性を高めるために重要な役割を果たしています。研究者、出版社、資金提供者が協力して資金提供情報を標準化することで、学術界全体の透明性が向上し、信頼性の高い研究が促進されます。今後、OFRのさらなる普及と改善が期待され、より多くの研究成果の追跡が可能になるでしょう。

参考

Crossref. (n.d.). Open Funder Registry. Retrieved September 23, 2024, from https://www.crossref.org/services/funder-registry/

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学術情報発信ラボ 執筆・編集チーム

学術情報発信に携わる編集チームとして、長年にわたり学術出版に関する深い知識と実績を有する。国内の数十誌にわたる学術雑誌の発行サポート経験を活かし「学術情報発信ラボ」の執筆チームとして、研究者や編集者に向けた最新のトピックや、研究成果の迅速な発信に貢献する情報を発信している。

専門分野は学術出版、オープンアクセス、学術コミュニケーションであり、技術的な側面と学際的なアプローチを交えた解説が特徴。

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