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altmetrics(オルトメトリクス)は、従来の引用数に依存せず、ソーシャルメディアやニュース、ブログなどWeb上での反応を基に研究成果の影響力を評価する新しい指標です。リアルタイムで研究の社会的インパクトを可視化でき、研究者や出版社にとって非常に有用です。さらにAltmetric.comやPlumX Metricsを活用することで、研究の広がりをより効果的に把握することができます。本記事では、altmetricsの仕組み、メリット、そしてその活用方法について詳しく解説します。
目次
- 1. altmetricsの意味と目的
- 1.1. altmetricsとは?
- 1.2. altmetricsとインパクトファクターやh-indexとの違い
- 1.2.1. altmetrics(オルトメトリクス)の主な違い
- 1.3. altmetricsによる論文の評価方法
- 2. altmetrics(オルトメトリクス)の計算方法と見方
- 3. Altmetric.comとは
- 3.1. Altmetric.comの特徴
- 3.2. Altmetric Attention Score(オルトメトリックアテンションスコア)
- 3.3. ソースごとの加重
- 3.4. Altmetric.comの注意点
- 4. PlumX Metricsとは
- 4.1. PlumX Metricsの特徴
- 4.2. PlumX Metricsデータソース
- 4.3. PlumX Metrics5つのカテゴリーの詳細
- 5. Altmetric.comとPlumX Metricsとの違い
- 6. altmetrics(オルトメトリクス)の活用:研究と発信の影響力を高める方法
- 6.1. altmetrics(オルトメトリクス)の活用
- 6.2. レイサマリー(Lay Summary)を活用して影響力を向上
- 6.3. Kudosの活用を活用して影響力を向上
- 7. altmetrics(オルトメトリクス)の活用事例
- 8. altmetrics(オルトメトリクス)の懸念点
- 9. まとめ
- 10. 参考
altmetricsの意味と目的
altmetricsとは?
altmetrics(オルトメトリクス)とは、従来の引用数での評価であるインパクトファクターに依存せず、Web上での反応を基に研究成果の影響力を評価する新しい指標です。
ソーシャルメディア、ニュース記事、ブログ、オンラインでの言及、ダウンロード数、文献管理ツール(例えばMendeleyでの保存数)など、多様なデータソースから研究の広がりや影響を評価します。
これにより、研究者は論文が学術界だけでなく一般社会でもどのように受け取られているかを比較的短期間で把握することができます。
※altmetrics(オルトメトリクス)は、「alternative(慣習[伝統]的方法をとらない、新しい)」と「metrics(測定法、評価指標)」を組み合わせた造語です。 |
altmetricsとインパクトファクターやh-indexとの違い
今までの学術誌の影響力を測る指標として一般的なインパクトファクターは、主に学術誌での引用数を基にした指標で、研究の学術的なインパクトを示します。また、主に研究者の評価指標であるh-indexも同様に引用数を基にした指標です。
一方、altmetrics(オルトメトリクス)はオンラインでのソーシャルメディアでのシェアやコメント、ニュース記事での取り上げ、論文管理ツールでの保存数など、学術界外での研究の受容や広がりを評価します。
インパクトファクターが長期的な引用による影響を重視するのに対し、altmetrics(オルトメトリクス)はリアルタイムでの影響力を測定できる点が大きな違いです。このため、研究が発表されてすぐにどのような反応を得ているかを迅速に知ることが可能です。
以下ではその違いについてを示します
スクロールしたら表示
特徴 | altmetrics (オルトメトリクス) | インパクトファクター | h-index |
---|---|---|---|
対象 | 主に論文 | 学術誌 | 主に研究者(学術誌) |
計算方法 | ・ソーシャルメディアでの言及 ・ダウンロード数 ・ニュースメディア、Wikipediaからの参照など多様な指標を集計 | (前2年間の掲載論文の被引用数) ÷ (前2年間の総掲載論文数) | h本以上の論文がh回以上引用されている最大のh値 |
時間スケール | 短期的影響を反映 | 2年間の短期的影響を測定 | 長期的な業績や影響を反映 |
評価の範囲 | 学術界内外の幅広い影響を測定 | 主に学術界内での影響を測定 | 主に学術界内での影響を測定 |
主な特徴 | ・幅広い影響力を測定 ・即時性が高い ・学術界外での影響も反映 | ・学術誌の影響力を示す ・分野間の比較が難しい ・短期的な影響を重視 | ・生産性と影響力を同時に評価 ・長期的な業績を反映 ・分野による差が大きい |
長所 | 多様な影響を包括的に評価できる | 学術誌の影響力を簡潔に示せる | 研究者の全体的な業績を単一の数値で表現できる |
短所 | データの操作や偏りの可能性がある | 分野による差が大きく、比較が難しい | 若手研究者や新しい分野では低くなりがち |
altmetrics(オルトメトリクス)の主な違い
測定対象:
- altmetrics(オルトメトリクス)は個々の研究成果を幅広く評価
- インパクトファクターは学術誌全体を評価
- h-indexは研究者個人または学術誌を評価
時間スケール:
- altmetrics(オルトメトリクス)は即時性が高く、短期的な影響を反映
- インパクトファクターは2年間の短期的な影響を測定
- h-indexは研究者のキャリア全体や学術誌の長期的な影響を評価
評価の範囲:
- altmetrics(オルトメトリクス)は学術界外も含む幅広い影響を測定
- インパクトファクターとh-indexは主に学術界内での影響を測定
これらの指標はそれぞれ異なる側面を評価するため、研究評価においては複数の指標を組み合わせて総合的に判断することが重要です。
altmetricsによる論文の評価方法
altmetrics(オルトメトリクス)では、論文や研究がソーシャルメディアやオンラインニュースでどのように取り上げられ、どのトピックとして議論されているかを測定します。
具体的には、ニュースサイトやWikipediaでの参照回数、SNS(例: X〔旧Twitter〕)での言及数、Wikipediaでの参照、ブログでの引用数など、さまざまなオンラインソースからの言及の回数が収集され評価されます。
このようにして収集されたデータにより、研究者や出版社は、論文がどの程度の社会的注目を集め、どの地域やどのような受け手層に影響を与えているかを把握することができます。たとえば、特定の研究が特定の地域や国でどのように反響を呼んでいるかや、どのような分野や産業での関心が高いかを可視化できるため、今後の研究戦略や広報活動に役立てることができます。
altmetrics(オルトメトリクス)の計算方法と見方
altmetrics(オルトメトリクス)はWEB上から、特定の記事の参照、引用、言及数が元となり論文の影響力を評価します。
ではどのようにその数を数えるのでしょうか。
altmetrics(オルトメトリクス)は一般的にWEB上でのツールを使用し、評価していきます。なかでも「Altmetric.com」と、「PlumX Metrics」は、研究成果のオンライン上での影響力を測定する代表的なaltmetrics(オルトメトリクス)評価ツールです。以下に両ツールをご紹介します。
Altmetric.comとは
Altmetric.comは、2011年に設立された、世界で最も広く知られているaltmetrics(オルトメトリクス)測定するサービスの1つです。
Altmetric.comは、研究成果がオンライン上でどのように注目されているかを可視化します。
具体的には、ソーシャルメディア、ニュース記事、ブログ、政策文書など、多様なデータソースから情報を収集し、研究成果の社会的影響力を評価します。
Altmetric.comの特徴
Altmetric.comは、特に「Altmetricドーナツ」と呼ばれるカラフルな視覚表示が特徴的で、これにより、どのデータソースが研究に対してどの程度の注目を集めているかを一目で確認することができます。
Altmetric.comの主な特徴:
- altmetrics(オルトメトリクス)のスコアがカラフルな「ドーナツ」形状のビジュアルで表示されています。
- ソーシャルメディア(Xや、Facebook)、ニュース、ブログ、政策文書など多様なソースからデータを収集しています。
- 各データソースに重み付けを行い、独自のAltmetric Attention Score(オルトメトリックアテンションスコア)を算出しています。ドーナッツの中の数字がAltmetric Attention Score(オルトメトリックアテンションスコア)です。
- 自身の研究論文に無料で表示出来たり、機関向けの有料サービス、書籍用サービスを提供しています。
注意点:Altmetric Attention Score(オルトメトリックアテンションスコア)が例えば、1000だった場合、この数値は、各ソーシャルメディアやニュース、ブログからの参照数、引用数、言及数の総和(全部足した数)ではございません。 Altmetric.comではAltmetric Attention Score(オルトメトリックアテンションスコア)を計算する際、各データソースに独自の重みづけをしております。 詳しくは下記、Altmetric Attention Score(オルトメトリックアテンションスコア)の項目をご確認ください。 |
Altmetric Attention Score(オルトメトリックアテンションスコア)
Altmetric Attention Score とは、研究成果に対する注目を測定する指標であり、主に2つの要因によって決まります。
Altmetric Attention Score(オルトメトリックアテンションスコア)の主な要因
1. 投稿の量
アウトプットに言及している投稿が多ければ多いほど、スコアは高くなります。量が増えるほどスコアも比例して増加します。
2. 投稿のソースの品質
すべての投稿が同じ価値を持つわけではありません。知名度の高いソースからの投稿は、低いソースよりも価値があります。例えば、ワシントン・ポストの記事はスコアに対する貢献度が高く、ブログ投稿はX(旧Twitter)投稿よりも高く評価されます。
投稿者の影響力
ソーシャルメディアでは、投稿者のフォロワー数や過去の投稿履歴、いいねや再投稿の数が考慮されます。例えば、医師の投稿は、ジャーナルの編集事務局からの自動投稿よりもソーシャルメディアでは高く評価されます。
ソースごとの加重
Altmetric Attention Score(オルトメトリックアテンションスコア)は、自動化されたアルゴリズムによって計算され、研究成果に対して集められた「注目」の量を加重したカウントで表します。
スコアにウェイトがかけられる理由は、各ソースの相対的なリーチ(どれだけ広く影響を及ぼすか)を反映するためです。
たとえば、新聞記事はソーシャルメディアの投稿よりも、研究成果に対する注目を集める可能性が高いと考えられるため、これがスコアに反映されます。
データソース名 | 加重値 |
---|---|
ニュース記事 | 8 |
ブログ | 5 |
ポリシー文書(ソースごと) | 3 |
特許 | 3 |
Wikipedia | 3 |
査読(Publons, Pubpeer) | 1 |
Weibo(2015年以降追跡不可) | 1 |
Google+(2019年以降追跡不可) | 1 |
F1000 | 1 |
シラバス(オープンシラバス) | 1 |
LinkedIn(2014年以降追跡不可) | 0.5 |
X〔旧Twitter〕(投稿と再投稿) | 0.25 |
Facebook(公開ページの厳選リストのみ) | 0.25 |
0.25 | |
Pinterest(2013年以降追跡不可) | 0.25 |
Q&A(スタックエクスチェンジ) | 0.25 |
YouTube | 0.25 |
Mendeleyの読者数 | 0 |
DimensionsやWeb of Scienceの引用数 | 0 |
Altmetric Attention Score 50だった場合
スコアが50だった場合、どこのソースから言及されれば50となるかサンプルを示しております(こちらをクリック)
Altmetric Attention Scoreが50の場合、下記のような具体的なシナリオが考えられます、これはソースごとの重み付けを考慮した組み合わせで表されています。
例:Altmetric Attention Score 50のシナリオ
以下のようなソースからの言及に基づいて、スコアが50に達することがあります。
- ニュース記事:全国的に有名なニュースメディア(例えば、The New York Times)で2回取り上げられる。
- 1記事あたりのスコア = 8
- 2記事 × 8 = 16
- ブログ:影響力のある科学ブログで3回言及される。
- 1記事あたりのスコア = 5
- 3記事 × 5 = 15
- Wikipedia:その論文がWikipediaの記事に掲載される。
- Wikipediaでの言及 = 3
- 政策文書:政府や国際機関の政策文書で2回言及される。
- 1文書あたりのスコア = 3
- 2文書 × 3 = 6
- ソーシャルメディア(X, 旧Twitter):Xで影響力のある科学者が3つの投稿で言及。
- 1投稿あたりのスコア = 0.25
- 3投稿 × 0.25 = 0.75 → 切り上げて1
- Facebook:公開されたFacebookページで2回言及される。
- 1投稿あたりのスコア = 0.25
- 2投稿 × 0.25 = 0.5 → 切り上げて1
合計スコアの計算
- ニュース記事 = 16
- ブログ = 15
- Wikipedia = 3
- 政策文書 = 6
- ソーシャルメディア(X)= 1
- Facebook = 1
合計スコア = 16 + 15 + 3 + 6 + 1 + 1 = 42
上記のシナリオでは合計が42になります。これに加え、別のブログやニュースサイトでの追加の言及や、他のソーシャルメディアでの言及(Pinterest、Redditなど)を考慮することで、スコアは50に到達します。
さらに考えられるシナリオ
- ポリシー文書で1つ追加(+3)
- 特許での引用が1つ追加(+3)
- YouTubeでの言及が数回追加(+0.25ごと)
このように、さまざまなプラットフォームでの言及が組み合わさることで、Altmetric Attention Score(オルトメトリックアテンションスコア)が50に達します。
Altmetric.comの注意点
altmetrics(オルトメトリクス)を計算しているAltmetric.comでは、WEB上の影響度を測るため以下のような注意点があります。
Altmetric.comの注意点:
- 影響力を測定:Altmetricは、研究の「品質」ではなくあくまでも「注目度」を測定します。注目される理由は必ずしもポジティブなものとは限りません。ネガティブの注目度も同様に評価されます。
- 世間の注目のみを追跡:Altmetricは公開されたオンライン情報のみを追跡します。プライベートフォーラムや電子メールなどのクローズでの議論はカウントされません。
- 直接的な言及がカウント:新聞記事やブログ記事がAltmetric attention score(オルトメトリックアテンションスコア)にカウントされるためには、DOI、PMID、ジャーナル記事へのリンクなどが必ず含まれている必要があります。
- 相対的な比較が重要:Altmetricは、異なる科学分野によって注目の基準が異なるため、同一分野内での比較に適しています。
Altmetric Attention Scoreは、投稿の量と質、さらに投稿者の影響力をもとに、自動的にスコアリングされています。
PlumX Metricsとは
PlumX Metricsの特徴
PlumX Metrics は、2012年にPlum Analyticsによって開発され、現在はElsevierが提供する、研究成果の影響力を測定するためのaltmetrics(オルトメトリクス)測定サービスです。
PlumX Metricsは、単純な引用数にとどまらず、学術的および非学術的な影響の両方を捉えることで、研究の広がりやインパクトを総合的に可視化します。
PlumX Metricsの主な特徴
- 5つのカテゴリーに分類された指標 :PlumX Metricsは、研究のインパクトを5つの異なるカテゴリーに分類して評価します。
- 使用(Usage): 研究がどれだけ読まれたり利用されたかを示す指標。
- キャプチャ(Captures): 読者が後で参照するためにブックマークや保存した頻度。
- 言及(Mentions): ニュースやブログでの言及やコメント。
- ソーシャルメディア(Social Media): SNSでのシェアや「いいね」などの活動。
- 引用(Citations): 学術的な引用や特許、政策文書での言及。
- 学術的・非学術的影響の測定:PlumX Metricsは、Scopusなどの引用データベースに加え、ソーシャルメディアやニュース、ブログといった非学術的なソースからもデータを収集し、研究成果の社会的影響を把握します。
- 個々の指標を詳細に表示:PlumX Metricsは、総合スコアを提供せず、各指標を詳細に表示します。これにより、研究がどの分野でどのように影響を与えているかをより深く分析することが可能です。
- 機関向けの包括的な分析ツール:大学や研究機関向けに、研究成果の影響をモニタリングできる包括的なツールを提供しています。
PlumX Metricsデータソース
PlumX Metricsは、さまざまなソースからデータを集め、研究の影響力を評価します。
PlumX Metricsのデータソース
- ソーシャルメディア: Facebook、X(旧Twitter)、LinkedInなど。
- ブログ、ニュース: 研究に関するブログ記事やニュースサイト。
- 引用データベース: Scopus、CrossRef、PubMed Centralなど。
- 電子書籍の使用統計: MendeleyやRePEcでのダウンロード数やビュー数。
- 機関リポジトリ: 大学のリポジトリでのダウンロード数やビュー数。
これらの多様なデータソースを通じて、従来の引用数だけでは測れない研究のインパクトをリアルタイムで把握できるのがPlumX Metricsの大きな利点です。
PlumX Metrics5つのカテゴリーの詳細
このような5つのカテゴリーに分けてを総合スコアを提供せず、各指標を詳細に表示します。
5つのカテゴリーの紹介
1. Citation Metrics(引用)
引用は、研究が他の文献や特許、政策文書などでどれだけ参照されているかを示します。PlumX Metricsでは、以下のようなソースからの引用をトラッキングします。
- Scopus: 学術論文からの引用。
- 特許引用: 特許文書での言及。
- 政策文書: 政府や国際機関の政策文書での言及。
2. Usage Metrics(使用)
Usage Metricsは、研究がどれだけ読まれたり、ダウンロードされたりしているかを示します。これにより、誰が研究を利用しているかを把握できます。
- ダウンロード数: 電子書籍や論文がダウンロードされた回数。
- ビュー数: ウェブサイトやリポジトリでの閲覧数。
3. Capture Metrics(キャプチャ)
Capture Metricsは、読者が研究を後で参照するために保存した頻度を示し、今後の引用につながる可能性を示します。
- ブックマークや保存: 論文管理ツール(例: Mendeley)での保存数。
- ウォッチャー数: 読者が将来の参照用に設定した回数。
4. Mention Metrics(言及)
研究がニュース記事やブログなどで言及された頻度を測定します。これにより、研究の社会的な注目度を評価できます。
- ブログ投稿: 研究に関するブログ記事。
- ニュース記事: 主要なニュースサイトでの言及。
- Wikipedia: Wikipediaでの参考文献としての使用。
5. Social Media Metrics(ソーシャルメディア)
ソーシャルメディアでのシェアや「いいね」などの活動を測定します。これにより、研究の「バズ」や一般の注目度を評価できます。
- Facebook: シェアや「いいね」の回数。
- X(旧Twitter): 研究に関するツイートやリツイート。
Altmetric.comとPlumX Metricsとの違い
Altmetric.comとPlumX Metricsの主な違いを以下の表にまとめました:
特徴 | Altmetric.com | PlumX Metrics |
---|---|---|
視覚化 | カラフルな「ドーナツ」形状の中にスコア表記 | Plum Print (5色の円のようなモチーフ) |
スコア算出 | 独自の加重Altmetricスコアを提供 | 総合スコアは提供せず、個別指標を表示 |
メトリクスカテゴリー | 単一のスコアに集約 | 5つのカテゴリー(引用、使用、キャプチャ、言及、ソーシャルメディア)に分類 |
データソースの範囲 | ソーシャルメディア、ニュース、ブログ等に焦点 | より広範囲のソース(学術的・非学術的両方を含む) |
Twitterデータ | 現在も追跡中 | 2023年8月31日以降は追跡していない |
主な採用プラットフォーム | 多くの出版社やジャーナルで採用 | Scopus, ScienceDirect, Digital Commons等Elsevierプラットフォームで採用 |
この表は両サービスの主要な違いを示していますが、両者とも研究成果のオンライン上での影響を測定する主要なツールであり、それぞれに独自の特徴と長所があります。
altmetrics(オルトメトリクス)の活用:研究と発信の影響力を高める方法
altmetrics(オルトメトリクス)の活用
研究者や出版社は、altmetrics(オルトメトリクス)を活用することで、研究成果の社会的影響力を大きく高めることができます。
特に、論文発表後にオンラインや、SNS、メールマガジンなどでプロモーションを積極的に行うことで、例えば、Altmetric Attention Score(オルトメトリックアテンションスコア)を向上させ、研究の可視性を広げることが可能です。
論文プロモーション事例
論文発表後に、TwitterやFacebook、LinkedInといったソーシャルメディアで論文を共有し、関連するハッシュタグを活用することで、より多くの人々に論文が届きます
。特に、同分野のインフルエンサーや著名な研究者に意図的にシェアしてもらうことで、研究の露出が高まり、altmetricsスコアを効果的に上昇させることが可能です。
また、ブログ記事での紹介や学会でのプレゼンテーションも有効な方法です。
レイサマリー(Lay Summary)を活用して影響力を向上
レイサマリー(Lay Summary) とは、論文や研究の専門的内容を、専門外の人々にもわかりやすく説明する要約です。
学術出版社や団体がこの出版後の例サマリーのサービスを提供している場合があり、一般の読者やメディア、政策立案者に研究の内容や意義を伝えるための重要なツールとなります。
レイサマリーを使って研究の内容を広く共有することで、altmetrics(オルトメトリクス)を高めることが可能です。
レイサマリーのオルトメトリクス活用事例
例えば、出版社が作成したレイサマリーをTwitterやLinkedInで共有することで、ソーシャルメディアでの反響を得やすくなります。
メディアやブログでの言及も増えることで、altmetricsスコアが向上し、研究の注目度が広がります。特に、政策文書や報道機関での引用に繋がることもあり、研究が社会的に広く認知される機会が増えます。
論文のレイサマリーとは?研究成果を分かりやすく伝える方法
レイサマリーは研究成果を専門家以外にも分かりやすく伝えるための重要なツールです。その作成方法と役割について詳しく解説します。
Kudosの活用を活用して影響力を向上
Kudos は、研究者が自身の研究成果を説明し、プロモーションするためのプラットフォームです。Kudosを通じて、研究者は自身の研究内容をわかりやすく要約し、非専門家向けに説明することで、より広い層に研究を届けることができます。研究者はKudosで、研究成果に対するアクセスを向上させ、研究の社会的インパクトを高めることができます。
Kudosのオルトメトリクス活用事例
Kudosでは、研究成果を簡単な言葉で要約したり、リンクや解説を追加することで、SNSやメールで簡単にシェアできます。
これにより、オンラインでの反響が増え、altmetrics(オルトメトリクス)を向上させることが期待できます。例えば、研究成果をKudosで要約してシェアすることで、SNSやブログでの言及が増え、研究の可視性が拡大します。
また、非専門家や一般の読者にもリーチしやすくなるため、研究の社会的影響力を高める手段として効果的です。
Kudosとは?研究論文の影響力を向上させるための有効なツール
Kudosは研究者が自身の研究を広く発信し、学術的影響力を高めるためのオンラインツールです。本記事ではKudosの使い方、学術的影響力向上のための戦略や活用事例について解説します。
altmetrics(オルトメトリクス)の活用事例
altmetrics(オルトメトリクス)の利点は、オンラインでの注目度や影響度を数値で示せることです。
研究者の活用事例として助成金を申請する申請書で「この論文は多くの注目を集めた」と書くのではなく、例えば、「Altmetric.comのAltmetric Attention Scoreが1,105で、世界の同分野の論文の中で上位5%に入る」と具体的に示す方が、はるかに助成団体には説得力があり、インパクトがあります。
altmetrics(オルトメトリクス)はインターネット上で学術界内外の評価を定量的に判断できるため、多く活用されております。
altmetrics(オルトメトリクス)の懸念点
altmetrics(オルトメトリクス)は、WEB上でのソーシャルメディアやニュース、ブログでの言及を基に研究の影響力を測定する便利なツールですが、いくつかの懸念点もあります。
まず、altmetrics(オルトメトリクス)は一般にオンライン上の注目度を評価するため、センセーショナルな内容の研究や、話題性のあるトピックに関する研究が過剰に評価される可能性があります。
これは、短期間で意図的に話題を集中させたり、関心を集めることができるため、長期的な学術的価値や研究の深みが十分に評価されないリスクがあります。例えば、ある研究が一時的にメディアやSNSで大きな注目を集めたとしても、その内容が必ずしも学術的に重要であるとは限りません。このような場合、短期的に注目度が高い研究がAltmetric Attention Score(オルトメトリックアテンションスコア)で過大評価され、逆に長期的で堅実な研究が過小評価される可能性があります。
また、データ操作のリスクも無視できません。たとえば、研究者や関連する関係者がSNSやブログで意図的に言及を増やすことで、altmetrics(オルトメトリクス)を操作できる可能性があります。
特定の研究が不自然に多くのオンライン言及を得ることで、実際の学術的評価とは異なる結果を示す恐れがあります。
さらに、altmetrics(オルトメトリクス)は多くの場合、社会的な関心やオンラインでの言及に依存しているため、学問分野ごとの評価の不均衡が生じやすいという問題があります。たとえば、生命科学や医療分野の研究は一般的にメディアやSNSで取り上げられやすい一方で、理論物理学や哲学などの分野ではオンラインでの言及が少なくなりがちです。その結果、altmetrics(オルトメトリクス)スコアが高い分野と低い分野の間で評価に偏りが生じ、分野全体の公平な評価が難しくなるという懸念が指摘されています。
このように、altmetrics(オルトメトリクス)は研究のオンラインでの影響力を測定するうえで有用なツールである一方で、その特性に伴う課題や限界についても慎重に考慮する必要があります。
研究の本質的な価値を見落とさないためにも、他の評価指標と組み合わせた多角的な評価が求められています。
まとめ
altmetrics(オルトメトリクス)は、従来の引用数に依存しない研究評価の新しい指標であり、ウェブ上の反応を基に研究の影響を広範に評価します。
特にリアルタイムでの影響を測定でき、研究の社会的インパクトを可視化する手段として有用です。
ただ、その評価結果には注意が必要です。特に、短期的な反響や社会的注目に基づく評価であるため、研究の学術的価値を正確に反映するものではないことを理解することが重要です。学術的な評価を行う際には、インパクトファクターや他の評価指標を含む複数の指標を用いて総合的に判断することが推奨されます。
参考
Zenodo. (n.d.). Record 12684249. https://zenodo.org/records/12684249
Current Awareness Portal. (n.d.). CAR-33464. https://current.ndl.go.jp/car/33464
Altmetric. (n.d.). Support Home. https://help.altmetric.com/support/solutionsElsevier. (n.d.).
PlumX Metrics. https://www.elsevier.com/insights/metrics/plumx
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学術情報発信に携わる編集チームとして、長年にわたり学術出版に関する深い知識と実績を有する。国内の数十誌にわたる学術雑誌の発行サポート経験を活かし「学術情報発信ラボ」の執筆チームとして、研究者や編集者に向けた最新のトピックや、研究成果の迅速な発信に貢献する情報を発信している。
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