Zenodoは、オープンサイエンスを推進するために開発されたオープンアクセスのリポジトリであり、研究成果を誰でも利用可能にすることを目指しています。CERN欧州原子核研究機構によって運営され、研究データやソフトウェア、学術資料を自由に共有できるプラットフォームとして、世界中の研究者に利用されています。本記事では、Zenodoの特徴やその活用方法について詳しく解説します。

Zenodoの概要と背景

Zenodoの誕生と背景

Zenodoは、欧州委員会のオープンデータ政策を支援するために、OpenAIREプロジェクトの一環として2013年に立ち上げられました。

CERN(欧州原子核研究機構)が運営し、オープンソースの理念に基づき開発されています。Zenodoの目的は、分野や国に縛られず、あらゆる研究者がオープンサイエンスに参加できる場を提供することです。

Zenodonoの名前の由来

Zenodoという名前は、アレクサンドリア古代図書館の最初の司書であった「ゼノドトス(Zenodotus)」に由来しています。ゼノドトスは、紀元前3世紀に活躍したギリシャの文法学者、文芸評論家、ホメロス学者でした。

ゼノドトスは、図書館史上で最初に記録されたメタデータの作成者として知られています。メタデータとは、書籍やデータの情報(例:タイトル、著者、出版年など)を整理・管理するための情報です。ゼノドトスは図書館の資料を整理するために、各巻物の端に著者名などの情報を記した小さなタグを付けました。これにより、利用者は巻物を開かずに内容を確認できるようになりました。

ゼノドトスのこの取り組みは、図書館での情報管理を効率化し、後の図書館の発展に寄与しました。彼はまた、資料を主題別に分類し、著者名のアルファベット順に配列するという原則も導入しました。

OpenAIRE:EUの論文や研究データを管理するプラットフォームを徹底解説

OpenAIREは、欧州連合が推進するオープンサイエンスプラットフォームで、研究者がデータや文献を一元管理・共有できる環境を提供します。Zenodoなどを活用し、研究の透明性と効率性を向上させます。

オープンサイエンスとの関連性

オープンサイエンスは、研究成果を公開し、誰でもアクセスできるようにすることを目的としています。

Zenodoは、このオープンサイエンスの中核を担うリポジトリとして、研究者がデータや論文を公開しやすくする仕組みを提供しています。また、デジタル時代における学術プロセスの変革を支える役割を果たしています。

Zenodoの目的と使命

Zenodoは、特定のフォーマットやライセンスに制約されない、誰でも利用可能なデータ共有の場を提供することを使命としています。データ、ソフトウェア、学術資料など、すべてのデジタルアーティファクトを受け入れることで、研究の透明性を高め、再現可能性を確保することを目指しています。また、全てのデータにDOI(デジタルオブジェクト識別子)が付与されるため、引用や再利用が容易になります。

Zenodoの主な機能と特徴

研究成果のオープンアクセス化

Zenodoは、研究者が自分の成果を自由に公開できるオープンアクセスリポジトリです。

論文、データセット、ソフトウェアなどを無料で公開でき、これにより研究成果が広く共有され、科学の発展に寄与します。研究者は、いつでも簡単にアップロードができ、公開されたデータはすぐに世界中からアクセス可能になります。

DOI(デジタルオブジェクト識別子)の発行

Zenodoでは、アップロードされたすべてのデジタルアーティファクトに対してDOIが発行されます。

これにより、研究成果の引用が容易になり、成果の永続的なアクセスが保証されます。DOIは、データの一貫性と信頼性を確保するための重要な要素であり、研究の再現性を高めるためにも重要です。

データ保存と共有(フォーマット、サイズ、ライセンス制限)

Zenodoは、データのフォーマットやサイズ、ライセンスに関する制限がなく、あらゆる種類のデータを受け入れます。

項目内容
ファイルサイズの制限- 1レコード当たり最大50GB
- 1レコード当たり最大100ファイル
※例外的に1度だけ200GBのファイルをアップロードすることが可能
データの種類あらゆるデータファイルでアップロード可能
ファイルの変更と更新- 発行後の直接変更は基本不可
- バージョン管理を行い新しいバージョンをアップロードで
DOI取得データにDataCiteのDOIが付与
アップロード前にDOIも取得可能
ライセンスの種類CC-BY-4.0がデフォルト
CC以外のライセンスも選択可能
コンテンツの責任アップロード者が責任を持つ
Zenodoのファイルアップロードの際の注意点(2024年10月確認)

GitHubとの統合によるコード公開

Zenodoは、GitHubと統合されており、研究者はGitHub上で管理しているソフトウェアやコードを簡単にZenodoに公開できます。

これにより、ソフトウェアのバージョン管理や引用が容易になり、オープンソースプロジェクトの共有と発展に貢献します。

Zenodoのインフラと運営体制

CERNによる運営とサポート

Zenodoは、CERNによって運営されています。CERNは、物理学の分野で先駆的な役割を果たし、ビッグデータ管理とデジタルライブラリの分野でも多くの技術を提供しています。このバックグラウンドにより、Zenodoは信頼性の高いデータリポジトリとして機能しています。

Zenodoのデータセンターとセキュリティ体制

ZenodoはCERNのデータセンターにホストされ、150ペタバイトのディスクと185ペタバイトのテープストレージを利用しています。さらに、セキュリティ面でも、ユーザーのデータは高い安全性を確保されており、データのバックアップやアクセス制御がしっかりと行われています。

データとメタデータの保存方法

Zenodoでは、データとそのメタデータがPostgreSQLに保存され、Elasticsearchによってインデックス化されています。

これにより、データの検索性が高まり、迅速なアクセスが可能です。また、メタデータはCC0ライセンスのもとで公開されており、すべてのデジタルアーティファクトは再利用が可能です。

Zenodoの活用方法とメリット

データの登録・アップロード手順

研究者はZenodoに簡単にデータをアップロードできます。

アカウントを作成し、データセットや論文、ソフトウェアなどのファイルを選択してアップロードするだけで、すぐにDOIが発行され、公開されます。アップロード時には、データのメタデータを詳細に記述することで、他の研究者が容易にアクセスできるようになります。

Zenodoを利用する最大のメリットは、データがDOIによって引用可能な形で公開される点です。これにより、研究者は自分のデータが他の研究者によって引用され、成果がより広範に認知される可能性が高まります。また、研究資金提供者への報告においても、ZenodoはOpenAIREを通じて研究成果の報告をサポートします。

公開前のデータ保護機能(制限付きアクセス、エンバーゴ設定)

研究者は、まだ公開できないデータを安全に保管するために、Zenodoの制限付きアクセス機能やエンバーゴ設定を活用できます。

この機能により、レビュー中の論文に関連するデータや、公開前の機密データを保護し、後で公開することが可能です。

Zenodoの今後の展望

オープンサイエンスにおける役割の拡大

オープンサイエンスが今後ますます重要視される中で、Zenodoの役割はさらに拡大していくと考えられます。

データ共有のプラットフォームとして、より多くの分野での利用が進むことで、世界中の研究者が簡単にデータを共有し、コラボレーションできる環境が整っていくでしょう。

商業サービスへの代替としての可能性

Zenodoは、CERNという非営利の機関によって運営されているため、商業的なデータ共有サービスに代わる信頼性の高い選択肢として注目されています。

今後もオープンソースの理念を守り続け、研究者にとって自由で使いやすいプラットフォームであり続けることが期待されています。

まとめ

Zenodoは、オープンサイエンスを支える重要なリポジトリとして、研究者に多くのメリットを提供しています。

CERNによる運営、DOIの発行、柔軟なデータ保存・共有機能など、信頼性と利便性が高く評価されています。今後も多くの研究者がZenodoを活用することで、科学の発展が促進されます。

参考文献

Zenodo. (n.d.). Zenodo documentation. Zenodo. Retrieved October 16, 2024, from https://help.zenodo.org/docs/

Zenodo. (n.d.). Zenodo - Research. Shared. Zenodo. Retrieved October 16, 2024, from https://zenodo.org/

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学術情報発信ラボ 執筆・編集チーム

学術情報発信に携わる編集チームとして、長年にわたり学術出版に関する深い知識と実績を有する。国内の数十誌にわたる学術雑誌の発行サポート経験を活かし「学術情報発信ラボ」の執筆チームとして、研究者や編集者に向けた最新のトピックや、研究成果の迅速な発信に貢献する情報を発信している。

専門分野は学術出版、オープンアクセス、学術コミュニケーションであり、技術的な側面と学際的なアプローチを交えた解説が特徴。

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