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近年、ChatGPTやLarge Language Models(LLM)などの人工知能(AI)ツールを研究出版物で活用するケースは、急速に拡大しています。特に、AIが執筆そのものに関与するケースが増え「AIを著者」とする新しい形態の学術論文も登場しております。しかし、その可能性とともに、倫理的課題や査読・AIやLLMなどの取り扱いにおける注意点も数多く浮上しています。本記事では、AIを活用した学術論文におけるポイントと注意事項について、体系的に解説します。
目次
- 1. 学術出版におけるAIツールの役割と課題
- 1.1. 学術分野におけるAIツールの活用事例
- 1.2. AI利用に関する主な課題
- 1.3. 出版社の役割と責任
- 2. 主要 学術編集者団体のAIポリシー概要
- 2.1. 各団体のAIポリシー概要
- 2.2. 各団体のAIポリシー詳細説明
- 2.2.1. ICMJE(国際医学雑誌編集者委員会)
- 2.2.2. COPE(出版倫理委員会)
- 2.2.3. WAME(世界医学編集者協会)
- 3. 主要学術出版社のAIポリシー概要
- 3.1. 主要出版社のAIポリシー比較表
- 3.1.1. NatureのAIポリシー
- 3.1.2. Springer NatureのAIポリシー
- 3.1.3. ElsevierのAIポリシー
- 3.1.4. Taylor & FrancisのAIポリシー
- 3.1.5. WileyのAIポリシー
- 4. 各出版社ポリシーの共通点と相違点
- 4.1. 共通点:AI利用をするときの透明性と倫理基準の重視
- 4.2. 学術情報発信とAIの未来
- 4.2.1. 新しいガイドラインの必要性
- 5. まとめ
- 6. 参考
AIに関する技術は現在急速に発展しており、日々新たな課題や可能性が明らかになっています。そのため、各出版社や編集団体が定めるポリシーも随時見直される可能性があります。最新の情報については、必ず各出版社や団体の公式ウェブサイトをご確認ください。この記事の内容は2024年12月時点での情報を基にしています。
学術出版におけるAIツールの役割と課題
学術分野におけるAIツールの活用事例
AIツールは、学術出版のあらゆる段階で活用され、その影響力は急速に拡大しています。これらのツールは、研究者や編集者にとって革新的なサポートを提供する一方で、学術分野全体の効率向上にも寄与しています。以下に、2025年1月現在でAIツールが具体的にどのように利用されているかを示します。
学術出版業界でのAIツールの活用事例
- 執筆支援
AIは執筆補助、文法やスペルのチェック、研究内容の要約作成、そして非ネイティブの研究者向けの言語改善ツールとして活用されています。
これにより研究者が自分の専門知識に集中することが可能になります。 - データ分析
大量のデータセットを迅速に処理し、そこから有用なパターンやトレンドを認識・分類することが可能です。これにより、研究のスピードが加速し、より高度な分析が実現します。 - レビュー過程の効率化
AIツールは、提出された論文の類似性検出や、形式上の問題点の事前チェックなど、査読プロセスの初期段階を補助します。これにより、編集者や査読者の作業負担を軽減し、全体的なプロセスを迅速化します。
これらの工程でのAIツール活用により、研究者や出版プロセスに携わる人々の負担が軽減されるとともに、効率的かつ高品質な学術情報の発信が可能となっています。
しかしながら、AIツールの導入に伴い、いくつかの重要な課題も明らかになっています。
AI利用に関する主な課題
AIツールの利用は、学術分野において数々のメリットをもたらす一方で、いくつかの重要な課題も存在しています。
学術出版におけるAIツールの主な課題を以下に整理して解説します。
- 正確性と信頼性の問題
現在の生成型AI(Generative AI)は、膨大なデータセットをもとに情報を生成しますが、「幻覚(hallucination:ハルシネーション)」と呼ばれる誤った情報を生成する可能性があります。
これにより、学術研究におけるデータや結論の信頼性が損なわれるリスクがあります。
例えば、AIによる要約や参考文献の生成において、存在しないデータや引用が含まれる可能性があり、これが学術的信頼性に重大な影響を与える可能性があります。 - データ保護とプライバシー
ChatGPTをはじめとするAIツールの多くは第三者のプラットフォームを利用して動作しており、研究者のデータや論文草稿といった機密情報が不正に使用されるリスクがあります。特に、クラウドベースのAIツールは、データがどのように処理されているか不透明な場合が多く、研究者や出版社はプライバシー侵害の可能性を慎重に検討する必要があります。 - 責任の所在
AIツールによって生成された文章やデータに対して、最終的に誰が責任を持つべきかという問題も課題の一つです。
例えば、AIが生成した誤情報が論文に掲載された場合、その責任が研究者にあるのか、ツールの開発者にあるのかという点は明確にされていません。このような曖昧さは、学術倫理をめぐる新たな議論を引き起こしています。
これらの課題を解決するためには、AIツールの信頼性を向上させる技術的な進歩だけでなく、利用者側の適切な管理と監視が求められます。
また、課題解決に向けて、出版社や研究者が果たすべき役割にも注目が集まっています。
出版社の役割と責任
AIツールの利用が拡大する中、学術出版社にはその利用を適切に管理し、信頼性を保つための重要な役割が求められています。
特に、AIツールの利用に関する基準やガイドラインを整備することは、学術出版全体の信頼性を維持するための不可欠な要素です。以下に、出版社が果たすべき具体的な責任を示します。
AIを使う際の出版社の役割と責任
- ガイドラインの策定
出版社は、AIツールの利用における透明性を確保するための明確な基準を策定する必要があります。これには、- AIを使用した場合の適切な開示方法
- 使用目的の限定
- AI生成データの検証手順
などが含まれます。これにより、研究者がAIを正しく利用し、学術的な不正行為を防ぐことが可能となります。 - 研究者や編集者への教育
AIツールの利用に伴うリスクや倫理的問題について、研究者や編集者に適切な教育を提供することも、出版社の重要な役割です。
例えば、AIツールが生成する情報の正確性をどのように検証すべきかや、AIによる画像生成の制限事項について周知することで、利用者がより安全かつ効果的にツールを活用できるよう支援します。 - 倫理基準の確立
出版社は、AIツールが学術的信頼性を損なわないよう、倫理基準を確立する責任があります。これには、AIが生成したデータや文章に対する最終的な責任が人間の研究者にあることを明確化することが含まれます。また、AIツールを過度に依存することを防ぎ、研究プロセスの透明性を維持するための仕組み作りも重要です。
このような取り組みを通じて、学術出版社はAIツールの効果的な活用を支援するとともに、学術情報の信頼性を高める役割を果たすことが期待されています。
論文の著者にAIは なれるのか? 各団体・出版会社のAIポリシーから読み解きます
主要 学術編集者団体のAIポリシー概要
ICMJE、COPE、WAMEなどの国際的な学術編集者団体はAIに関するポリシー(方針)を定めております。
学術出版社もこれらの団体のAIポリシーを参照しながら、自社のポリシーを策定しています。本記事では、これら団体のAIポリシーを詳細にご紹介します。
各団体のAIポリシー概要
組織名(英語) | 組織名(日本語) | 方針の概要 | 主なポイント |
---|---|---|---|
ICMJE | 国際医学雑誌編集者委員会 | 著者とAIツールの役割を明確化 | - AIツールは著者として記載不可。 - AIツールの使用は方法セクションや謝辞で開示が必要。 - AIによる生成物は著者が最終責任を負うべきで、盗作や不正確な情報がないことを確認する必要がある。 |
COPE | 出版倫理委員会 | AIツールの使用の透明性と倫理の確保 | - AIツールは著者として登録不可(責任を持てず、法的地位がないため)。 - AIの使用は透明性を持って開示し、方法セクションで具体的に記述する必要がある。 - AIによる生成物の正確性、盗作防止、適切な帰属を著者が確保する責任を負う。 |
WAME | 世界医学編集者協会 | 学術出版におけるAIの利用についての推奨事項 | - AIツールは著者として記載不可(法的地位がなく責任を持てない)。 - AIの使用は透明に開示し、プロンプト内容、使用ツール、バージョンを記載する必要がある。 - 著者はAIによる生成物の正確性や盗作がないことを保証し、対立する見解や根拠も反映する必要がある。 - 編集者と査読者もAIの使用を開示する責任を負う。 |
各団体のAIポリシー詳細説明
ICMJE(国際医学雑誌編集者委員会)
国際的な医学雑誌の編集者が集まったICMJEでは、AIポリシーを以下のように定めています。
- AIツールは著者として記載することを禁止しており、生成物に対しては著者が責任を持つべきとされています。
- AIツールの使用は原稿の方法セクションや謝辞で開示し、透明性を確保することが求められます。
- 著者は、AIが生成した内容について盗作や不正確な情報がないか確認する義務を負います。
ICMJE(医学雑誌編集者国際委員会):医学雑誌出版の統一ガイドライン
ICMJE(医学雑誌編集者国際委員会)は、国際的な医学出版のガイドラインを提供し、透明性と倫理性を促進する団体です。このガイドライン世界中の医学系学術雑誌で広く利用されております。
COPE(出版倫理委員会)
学術出版の倫理基準を提案するCOPEは、以下の方針を掲げています。
- AIツールを著者として登録することは認められません。その理由として、AIには法的地位や責任能力がないことが挙げられます。
- 著者がAIツールを利用する際は、方法セクションでどのように使用したかを明確に記述し、透明性を維持する必要があります。
- AIによる生成物の正確性や倫理的問題については、著者が全責任を持つべきとされています。
COPE:https://publicationethics.org/guidance/cope-position/authorship-and-ai-tools
COPEとは? 学術出版における倫理的ガイドライン
COPEは学術出版における倫理的ガイドラインを提供する組織で、著者、編集者、査読者、出版社が守るべき基準を示し、不正行為や利益相反に対応します。
WAME(世界医学編集者協会)
医療分野の学術編集者が所属するWAMEでは、以下の推奨事項を示しています。
- AIツールは著者として記載できません。これは、AIが責任を負う能力や法的地位を持たないためです。
- AIの使用は透明性を保ち、プロンプト内容や使用ツールを具体的に開示する必要があります。
- 著者は、AIが生成したテキストやデータの正確性や出典の適切な帰属について責任を持つ必要があります。
- 編集者や査読者も、AIの利用に関する情報を明示する義務があります。
WAME:https://wame.org/page3.php?id=106
WAME(世界医学雑誌編集者協会):医学雑誌編集者を支援するサービスと方針の策定
WAME(世界医学雑誌編集者協会)は、医学雑誌の編集者を支援し、学術出版の質を向上させるために様々な方針とリソースを提供しています。これには、透明性と倫理基準の確保に関するガイドラインや、AIの活用に関する推奨事項、ピア […]
このような各団体のAIに関するポリシーは学術出版におけるAIツールの適切な利用を促進し、透明性と信頼性を維持するための重要なガイドラインです。各団体のポリシーを参考に、ルールを構築する際の指針として活用できます。
これらの情報は、2024年12月時点で最新のものです。各出版社のポリシーは随時更新される可能性があるため、最新の情報については各出版社の公式ウェブサイトを確認してください。
主要学術出版社のAIポリシー概要
主要出版社のAIポリシー比較表
以下は、Nature、Wiley、Springer Nature、Taylor & FrancisのAIに関する主要ポリシーを比較した表です。以下は2024年12月の調査です。AIに関する内容は現在状況が変わることが多く、必ず1次情報をご確認ください。
出版社 | AIツール利用の透明性 | データ生成/加工制限 | AIを著者に登録する | 画像生成AIの扱い | 査読者によるAI利用許可 | 理由 |
---|---|---|---|---|---|---|
Nature | 必須: (方法セクション、または適切な代替部分で詳細を開示) | 情報なし | 認めない | 原則禁止 (例外として、特定条件を満たす場合や契約関係に基づく合法的な画像利用を許可) 例外は明確に「AI生成」とラベル付けする必要あり | 禁止 | 査読者は原稿をジェネレーティブAIにアップロードすることが禁止されている。AIツールが出力した内容を評価に使用する場合、透明性をもって申告する必要がある |
Springer Nature | 必須: (透明性を重視) | 情報なし | 認めない | 原則禁止 (例外あり) | 禁止 | 査読者は原稿をジェネレーティブAIツールにアップロードすることが禁止されている |
Elsevier | 必須: (原稿末尾の「ジェネレーティブAIおよびAI支援技術宣言」欄で詳細を開示) | 許可されない(執筆プロセスでAIを利用する場合は言語改善のみに限定) | 認めない | 原則禁止 (研究デザインや研究方法の一部としてAIを使用する場合を除く。詳細は方法セクションに記載が必要) | 禁止 | 査読者が原稿をジェネレーティブAIツールにアップロードすることは禁止されている。AIツールは批判的思考や評価を補完する範囲外であり、不正確な結論を生む可能性があるため 。 |
Taylor & Francis | 必須: (利用を明確に認める必要がある) | 情報なし | 認めない | 禁止 | 禁止 | 編集者と査読者は、未公開原稿の情報をジェネレーティブAIツールにアップロードすることが禁止されている。 |
Wiley | 必須: (方法セクション、謝辞、または適切な開示で詳細に記述) | 禁止 (オリジナルの研究データや結果の作成、変更、操作に使用不可) | 認めない | 情報なし | 限定的に許可 (ピアレビューレポートの品質向上のみ) | 査読者がAIツールを使用する場合、原稿の取り扱い編集者に透明性を持って申告する必要がある。 |
NatureのAIポリシー
Natureは、AIツールの使用に関して厳格なガイドラインを設けています:
- 利用透明性の重視: AIツールを使用した場合は、方法セクション(「方法セクション(Methods Section)」とは、論文内で研究手法やプロセスを詳細に記述するセクション。ここにGenerative AIの利用についての情報を含め、透明性を確保することが求められる)または謝辞で明記することが義務付けられています。
- データ生成の制限: 具体的な情報は提供されていませんが、オリジナルの研究データや結果の作成にAIを使用することは推奨されていません。
- 著者登録不可: AIツールを著者として登録することは認められていません。
- 画像生成AIの制限: 研究内容に直接関係するAI以外の記事では、生成AIによって全体的または部分的に作成された写真、ビデオ、イラストの掲載を許可していません。
NatureのAIポリシー:https://www.nature.com/nature-portfolio/editorial-policies/ai
Springer NatureのAIポリシー
Springer Natureは、Natureと同じ出版グループに属しているため、類似したポリシーを採用しています:
- 透明性の重視: AI利用は申告が必須です。
- 画像生成の制限: 生成AIによる画像の使用は原則として禁止されていますが、例外が認められる場合があります。
- 査読者のAI利用制限: 査読者が未公開原稿をジェネレーティブAIツールにアップロードすることは禁止されています。
Springer NatureのAIポリシー:https://www.springer.com/us/editorial-policies/artificial-intelligence--ai-/25428500
ElsevierのAIポリシー
Elsevierは、AIツールの使用に関して下記のポリシーを設けています:
- 利用透明性の重視: 著者は、ジェネレーティブAIやAI支援技術を使用した場合、原稿末尾に利用ツール名と目的を記載する必要があります。
- データ生成の制限: AIツールの使用は言語改善に限定され、研究デザインや方法論に関連する利用は詳細を記載すれば許可されます。
- 著者登録不可: AIやAI支援技術は責任能力を持たないため、著者として登録することは認められません。
- 画像生成AIの制限: 画像生成AIの使用は基本的に禁止されており、研究デザインや方法論の一部として使用する場合に限り、詳細な説明とツール情報の開示が求められます。
ElsevierのAIポリシー:https://www.elsevier.com/about/policies-and-standards/generative-ai-policies-for-journals
Taylor & FrancisのAIポリシー
Taylor & Francisは、AIの利用に関して以下のようなガイドラインを設けています:
- AIの利用透明性: AIの使用を明確に認め、その利用を開示することを要求しています。
- 査読者のAI利用制限: 編集者と査読者は、未公開原稿の情報をジェネレーティブAIツールにアップロードすることが禁止されています。
- 画像生成AIの扱い: 画像生成AIの使用は禁止されています。
Taylor & FrancisのAIポリシー:https://taylorandfrancis.com/our-policies/ai-policy
WileyのAIポリシー
Wileyは、以下のような特徴を持つポリシーを採用しています:
- 明確な開示要求: AIツール利用は、方法セクション、謝辞、または適切な開示セクションで詳細に記述する必要があります。
- データ生成/加工制限: オリジナルの研究データや結果の作成、変更、操作にジェネレーティブAI(生成型人工知能)ツールを使用することは禁止されています。
- 著者登録不可: ジェネレーティブAIは著者として認められません。
- 査読者のAI利用: 査読者はジェネレーティブAIを限定的に使用することが許可されていますが、ピアレビューレポートの文章の質を向上させる目的に限られ、使用は編集者に申告する必要があります。
- 画像生成AIの扱い: 具体的な情報は提供されていませんでした。
WileyのAIポリシー:https://authorservices.wiley.com/ethics-guidelines/index.html#5
これらの情報は、2024年12月時点で最新のものです。各出版社のポリシーは随時更新される可能性があるため、最新の情報については各出版社の公式ウェブサイトを確認してください。
各出版社ポリシーの共通点と相違点
共通点:AI利用をするときの透明性と倫理基準の重視
主要な学術出版社は、AIツールの活用において、共通して「透明性」と「倫理基準」を最優先課題として掲げています。それぞれのポリシーには細かい違いがあるものの、基本的な方向性は同じであり、以下の2点がすべての出版社に共通する特徴です。
各出版社におけるAI利用の共通点
- 透明性の確保
全ての出版社は、AIツールを使用する際の透明性を確保することを重視しています。具体的には、研究者がAIツールを使用した場合、その目的、方法、などを、論文の「方法」セクションや「謝辞」に記載することを義務付けています。この開示義務は、研究の正確性や再現性を担保するために不可欠な要素とされています。 - 著者責任の徹底
AIツールの利用がどれだけ高度であっても、AIを論文の著者として登録することは認められていません。著者とは、研究の設計、データ収集、解析、執筆などにおいて責任を負う存在であり、AIはそれを担うことができないためです。さらに、AIによる生成物が含まれる場合、その内容の正確性や研究倫理に関する責任は、あくまで人間の研究者が負うべきだとされています。
学術情報発信とAIの未来
新しいガイドラインの必要性
AI技術の進化は、学術情報発信の未来に大きな変化をもたらしています。これに伴い、各編集団体や出版社、学術団体は現行のポリシーを定期的に見直し、新たな課題に対応するためのガイドラインを整備する必要があります。特に以下の点が注目されています。
AIツールに向けての今後の対応
- 生成型AIの新たなツールへの対応
生成型AIの進化により、AIエージェントなどさらに新しいツールや技術が次々と登場しています。これらが学術研究や出版のプロセスに及ぼす影響を正確に評価し、それに応じた柔軟な規制を導入することが求められています。例えば、データ生成における正確性の担保や、不正利用を防止する仕組みの構築が必要です。 - 倫理的基準のさらなる厳格化
学術出版における倫理基準を維持するために、AIの利用範囲や使用目的を明確化する取り組みが重要です。特に、AIが生成したデータや文章がどのように研究プロセスに組み込まれるべきかを明確に定めることで、研究者間の不公平感や疑念を払拭することが可能です。
まとめ
本記事では、各団体や主要な学術出版社のAIポリシーを比較し、共通点と違いを整理しました。これらの団体や出版社は、AI技術がもたらす新たな可能性を認めつつ、学術的な信頼性を守るため慎重な方針を採用しています。
共通点として、すべての団体や出版社が、AIツールの使用における「透明性」と「倫理基準」の重要性を強調しています。また、研究者に対して明確なガイドラインを提供し、適切な利用を促しています。
AI技術は今後さらに進化するため、出版社はポリシーを随時見直し、適応させる必要があります。AIと人間が協力しながら学術情報を発信する仕組みを築くことが、これからの重要な課題です。
研究者に求められるのは、AIを適切に活用しつつ、学術倫理と透明性を重視することです。AIと人間が協力することで、信頼性の高い学術情報の発信を目指していくべきでしょう。
参考
International Committee of Medical Journal Editors (ICMJE). (n.d.). Defining the role of authors and contributors. Retrieved December 2024, from https://www.icmje.org/recommendations/browse/roles-and-responsibilities/defining-the-role-of-authors-and-contributors.html#four
Committee on Publication Ethics (COPE). (n.d.). COPE position statement on authorship and AI tools. Retrieved December 2024, from https://publicationethics.org/guidance/cope-position/authorship-and-ai-tools
World Association of Medical Editors (WAME). (n.d.). WAME position on the use of artificial intelligence (AI) in academic publishing. Retrieved December 2024, from https://wame.org/page3.php?id=106
Nature Portfolio. (n.d.). Editorial policies: Artificial intelligence (AI). Retrieved December 2024, from https://www.nature.com/nature-portfolio/editorial-policies/ai
Springer Nature. (n.d.). Artificial intelligence (AI): Guidelines for authors and editors. Retrieved December 2024, from https://www.springer.com/us/editorial-policies/artificial-intelligence--ai-/25428500
Elsevier. (n.d.). Generative AI policies for journals. Retrieved December 2024, from https://www.elsevier.com/about/policies-and-standards/generative-ai-policies-for-journals
Taylor & Francis. (n.d.). AI policy: Responsible AI use in scholarly publishing. Retrieved December 2024, from https://taylorandfrancis.com/our-policies/ai-policy
Wiley. (n.d.). Ethics guidelines for authors and reviewers. Retrieved December 2024, from https://authorservices.wiley.com/ethics-guidelines/index.html#5
National Institutes of Health. (n.d.). Use of generative AI in peer review. Retrieved January 20, 2025, from https://grants.nih.gov/faqs#/use-of-generative-ai-in-peer-review.htm?anchor=56948
学術情報発信ラボ 執筆・編集チーム
学術サポートGr.
学術情報発信に携わる編集チームとして、長年にわたり学術出版に関する深い知識と実績を有する。国内の数十誌にわたる学術雑誌の発行サポート経験を活かし「学術情報発信ラボ」の執筆チームとして、研究者や編集者に向けた最新のトピックや、研究成果の迅速な発信に貢献する情報を発信している。
専門分野は学術出版、オープンアクセス、学術コミュニケーションであり、技術的な側面と学際的なアプローチを交えた解説が特徴。