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FAIR原則は、研究データの発見性、アクセス性、相互運用性、再利用性を高めるためのガイドラインです。この原則は、データ管理と共有の標準を提供し、科学研究の透明性と効率を向上させることを目的としています。本記事では、FAIR原則の概要とその重要性について詳しく解説します。
目次
- 1. FAIR原則の概要
- 2. FAIR原則の歴史と背景
- 3. Findable(見つけられる)とは?
- 3.1. Findable(見つけられる)を高める方法
- 4. Accessible(アクセスできる)とは?
- 4.1. Accessible(アクセスできる)を確保する方法
- 5. Interoperable(相互運用できる)とは?
- 5.1. Interoperable(相互運用できる)を促進するためには
- 6. Reusable(再利用できる)とは?
- 6.1. Reusable(再利用できる)を向上させる方法
- 7. FAIR原則の導入における課題と解決策
- 8. FAIR原則とオープンサイエンス
- 9. まとめ
- 10. 参考文献
FAIR原則の概要
FAIR原則は、研究データの管理と共有を促進するためのガイドラインであり、データの発見性、アクセス性、相互運用性、再利用性を高めることを目的としています。
FAIRはFindable(見つけられる)、Accessible(アクセスできる)、Interoperable(相互運用できる)、Reusable(再利用できる)の頭文字を取ったもので、これらの原則に従うことで、データの質と利用価値が向上します。
FAIR原則は、研究データが他の研究者によって容易に発見され、アクセスされ、異なるシステム間で相互運用され、再利用されることを目指しています。これにより、科学研究の効率と透明性が大幅に向上し、新しい発見やイノベーションの促進に寄与します。
FAIR原則の歴史と背景
FAIR原則は2016年に、データ管理と共有に関する国際的な課題に対処するために提案されました。これは、科学データの利用を最大化し、研究の透明性と再現性を高めるための取り組みとして始まりました。オランダのライデン大学のBarend Mons教授らが中心となって策定され、ヨーロッパ全域での科学データ管理の標準として広く受け入れられています。
Findable(見つけられる)とは?
Findable、つまり発見可能性とは、データが容易に検索され、見つけられる状態を指します。
これには、データが一意に識別可能であること、メタデータが適切に付与されていること、検索エンジンやリポジトリでのインデックスが充実していることが含まれます。発見性を高めることで、他の研究者がデータにアクセスしやすくなり、研究の効率が向上します。
Findable(見つけられる)を高める方法
データの発見性を高めるためには、次のような手段があります:
- 一意の識別子の使用:DOI(デジタルオブジェクト識別子)などの一意の識別子を使用することで、データセットが他のデータと区別されやすくなります。
- 充実したメタデータの付与:データセットに関連する詳細なメタデータを付与することで、検索エンジンでのインデックス精度が向上し、発見性が高まります。
- 適切なリポジトリの利用:信頼性の高いデータリポジトリにデータを登録することで、他の研究者がデータを発見しやすくなります。
Accessible(アクセスできる)とは?
Accessible、つまりアクセス可能性とは、適切な認証と認可を経てデータが容易に取得できる状態を指します。
アクセス性を確保することで、必要なデータに対して迅速かつ確実にアクセスできるようになります。これは、データの利用可能性を高め、研究活動を支援します。
Accessible(アクセスできる)を確保する方法
データのアクセス性を確保するためには、次の手段が重要です:
- 適切な認証と認可手続き:データにアクセスするための認証と認可手続きが明確に定められていること。
- データの保存場所とアクセス手順の明確化:データがどこに保存されているか、どのようにアクセスするかの手順が明確に記載されていること。
- 機械可読形式での提供:データが機械可読形式で提供されることで、プログラムによる自動化されたデータ解析が容易になること。
Interoperable(相互運用できる)とは?
Interoperable、つまり相互運用性とは、異なるシステムやアプリケーション間でデータが連携して使用できる状態を指します。
相互運用性を確保することで、異なる研究分野や機関間でデータを共有し、活用することが可能となります。
Interoperable(相互運用できる)を促進するためには
データの相互運用性を促進するための技術には、次のものがあります:
- 共通フォーマットの使用:データを標準化されたフォーマットで保存することで、異なるシステム間でのデータ交換が容易になります。
- オントロジーの使用:データの意味を共有するために、共通のオントロジーを使用することが重要です。
- APIの利用:データアクセスのための標準化されたAPIを提供することで、異なるシステム間でのデータ利用がスムーズになります。
Reusable(再利用できる)とは?
Reusable、つまり再利用可能性とは、データが他の研究者によって再利用される状態を指します。
これには、データのライセンスや使用条件が明確に定められていること、データの品質が保証されていることが必要です。
Reusable(再利用できる)を向上させる方法
データの再利用性を向上させるためには、次の手段が有効です:
- 明確なライセンスの設定:データの利用条件を明確に示すライセンスを設定すること。
- データ品質の保証:データの完全性と信頼性を保証するための品質管理手法を導入すること。
- 充実したメタデータの提供:データに関連する詳細なメタデータを提供することで、再利用の際の理解が深まります。
FAIR原則の導入における課題と解決策
FAIR原則の導入にはいくつかの課題があります。例えば、データの適切なメタデータ付与、標準化されたデータフォーマットの使用、データの保存とアクセスのためのインフラ整備などが挙げられます。これらの課題に対しては、教育とトレーニング、技術支援、政策の整備などが解決策として提案されます。
FAIR原則とオープンサイエンス
FAIR原則は、オープンサイエンスの重要な要素です。オープンサイエンスは、研究成果を広く公開し、誰でもアクセスできるようにすることを目指しています。FAIR原則に従うことで、データの公開と共有が促進され、オープンサイエンスの実現に寄与します。
まとめ
FAIR原則は、研究データの管理と共有を促進するための重要なガイドラインです。データの発見性、アクセス性、相互運用性、再利用性を向上させることで、科学研究の透明性と効率が大幅に改善されます。研究者は、FAIR原則に基づいてデータ管理を行うことで、より質の高い研究成果を得ることができます。
参考文献
- Wilkinson, M. D., Dumontier, M., Aalbersberg, I. J., Appleton, G., Axton, M., Baak, A., ... & Mons, B. (2016). The FAIR Guiding Principles for scientific data management and stewardship. Scientific data, 3(1), 1-9.
- Mons, B., Neylon, C., Velterop, J., Dumontier, M., da Silva Santos, L. O. B., & Wilkinson, M. D. (2017). Cloudy, increasingly FAIR; revisiting the FAIR Data guiding principles for the European Open Science Cloud. Information Services & Use, 37(1), 49-56.
- 武田, 英明 (2016). 研究データ利活用に関する国内活動及び国際動向について. 第2回 SPARC Japan セミナー.
- バイオサイエンスデータベースセンター (2018). データ共有の基準としてのFAIR原則.
学術情報発信ラボ 執筆・編集チーム
学術サポートGr.
学術情報発信に携わる編集チームとして、長年にわたり学術出版に関する深い知識と実績を有する。国内の数十誌にわたる学術雑誌の発行サポート経験を活かし「学術情報発信ラボ」の執筆チームとして、研究者や編集者に向けた最新のトピックや、研究成果の迅速な発信に貢献する情報を発信している。
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