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OpenAIREは、欧州連合(EU)によって設立されたオープンサイエンスプラットフォームで、研究データや文献の公開と共有を促進します。研究者は、複数のデータソースやリポジトリにアクセスし、文献とデータを一元的に管理できるため、研究の効率が向上し、新たな発見が期待されます。特にZenodoなどのリポジトリを活用することで、オープンアクセスとFAIRデータ原則を実現し、研究成果の透明性を確保します。
目次
- 1. オープンアクセスとOpenAIREの概要
- 1.1. OpenAIREとは何か?
- 1.2. OpenAIREの歴史と背景
- 1.2.1. OpenAIREの設立経緯
- 1.2.2. 欧州連合との関係性
- 2. OpenAIREの主な機能とサービス
- 2.1. 文献とデータの統合プラットフォーム
- 2.2. OpenAIREが提供する主なサービス
- 2.3. 研究データの相互運用性
- 3. OpenAIREが推進するオープンサイエンス
- 3.1. オープンサイエンスの基本理念
- 3.2. オープンアクセスとオープンデータの推進
- 4. OpenAIREの研究データ管理の仕組み
- 4.1. 研究データの収集と提供プロセス
- 4.2. フェアデータの実現
- 5. OpenAIREの活用方法と事例
- 5.1. 研究プロジェクトへの統合
- 5.2. 学術機関での導入事例
- 6. OpenAIREの今後の展望と課題
- 6.1. 国際的な連携と拡大
- 6.2. 研究データ管理の課題
- 7. まとめ
- 8. 参考
オープンアクセスとOpenAIREの概要
OpenAIREとは何か?
OpenAIRE(Open Access Infrastructure for Research in Europe)とは、欧州連合(EU)が主導するオープンサイエンスを支える研究情報プラットフォームで学術論文や研究データを公開し、誰もが自由にアクセスできる環境を整えることを目的としています。
OpenAIREは、欧州の研究者や機関が発表した研究成果を一元的に管理し、オープンアクセスの普及と研究成果の活用を促進しています。
オープンアクセス(Open Access)とは、学術論文や研究データを無料で公開し、世界中の誰もがアクセスできる状態を指します。
これにより、研究の透明性が高まり、科学の発展が加速します。OpenAIREは、こうしたオープンアクセスの基盤として、研究成果を管理し、世界中の研究者や一般市民が知識を共有できる環境を提供します。
OpenAIREの歴史と背景
OpenAIREの設立経緯
OpenAIREは2008年に設立されました。その目的は、欧州連合(EU)や欧州研究会議(ERC)によって資金提供された研究成果をオープンアクセスで公開し、共有するためのインフラを整備することでした。
欧州連合(EU)は、オープンサイエンスの推進を強く支持しており、OpenAIREはその中心的な役割を果たしています。
欧州連合との関係性
OpenAIREはEUの支援のもとで開発され、Horizon 2020やEuropean Research Area(ERA)といったEUの主要研究プログラムと密接に連携しています。
また、OpenAIREはEuropean Open Science Cloud(EOSC)の一部として、欧州全体でのオープンサイエンスのインフラを構築する役割を担っています。このように、OpenAIREはEUのオープンサイエンス政策の実現において重要な役割を果たしております。
OpenAIREの主な機能とサービス
文献とデータの統合プラットフォーム
OpenAIREのもう一つの重要な機能は、文献やデータを一元的に管理する統合プラットフォームの提供です。
これにより、研究者は複数のデータソースやリポジトリにアクセスできるだけでなく、それらを統合的に利用することができます。これにより、研究の効率が向上し、新たな発見が促進されます。
OpenAIREが提供する主なサービス
OpenAIREは学術コミュニケーションを支える様々なサービスを提供・運営しております。主なサービスを下記に示します。
OpenAIREが提供する主なサービス
OpenAIRE Explore
OpenAIRE Exploreは、研究成果やデータを検索できるプラットフォームです。
これにより、研究者は論文、データセット、プロジェクト情報、特許、ソフトウェアなど、さまざまなタイプの研究成果にアクセスできます。このプラットフォームは、欧州や世界中のオープンアクセスリポジトリ、学術出版物、研究データリポジトリから情報を収集し、一元的に提供しています。
Zenodo
Zenodoは、OpenAIREが提供するオープンアクセスのリポジトリで、研究者は自らのデータや論文を無料でアップロードし、公開することができます。
特に、欧州研究会議(ERC)や欧州連合(EU)によって資金提供されたプロジェクトのデータを管理することが多いです。研究者はあらゆる形式のデータ(テキスト、ソフトウェア、データセットなど)を保存でき、DOI(デジタルオブジェクト識別子)が自動的に付与されるため、データの信頼性が保証されます。
OpenAIRE Graph (旧OpenAIRE CONNECT)
OpenAIRE Graphは、研究成果間の関連性を示すナレッジグラフを提供しています。
これにより、論文とその背後にあるデータが容易に関連付けられ、研究者は関連情報に迅速にアクセスできるようになります。
OpenAIRE Guidelines (旧OpenAIRE PROVIDE)
OpenAIRE Guidelinesは、データプロバイダーがOpenAIREと互換性のある方法でメタデータを公開するための指針を提供しています。
これにより、リポジトリやジャーナル、研究管理システムなどのデータ提供者は、OpenAIREのプラットフォームを通じてデータを広く共有することができます。
OpenAIRE Monitor
OpenAIRE Monitorは、研究活動の監視と評価のためのオンデマンドサービスです。
資金提供機関、研究機関、研究イニシアチブに対して、研究活動の指標やメトリクスを含むカスタマイズされたダッシュボードを提供します。これにより、オープンサイエンス政策の実施状況や影響を監視し、効率的な資源配分や意思決定をサポートします。
これらのサービスは、オープンサイエンスの推進と研究データの効率的な管理・共有を支援する統合的なエコシステムを形成しています。OpenAIREは、これらのツールを通じて、研究の透明性、再現性、効率性の向上に貢献しています。
研究データの相互運用性
OpenAIREは、研究データの相互運用性を推進しています。
異なるシステムやこのようなサービスのプラットフォーム間でデータをやり取りできるようにすることで、データの再利用や共有を容易にします。これにより、研究者は他の研究者のデータを利用して、新しい研究を行うことが可能になります。
OpenAIREが推進するオープンサイエンス
オープンサイエンスの基本理念
オープンサイエンスとは、研究成果を広く公開し、誰でも自由にアクセスできるようにすることで、科学の透明性と協力を促進するという理念です。
OpenAIREは、この理念を実現するために、論文やデータのオープンアクセスを推進しています。
オープンアクセスとオープンデータの推進
OpenAIREは、論文やデータのオープンアクセスを推進するだけでなく、研究データがFAIR(Findable, Accessible, Interoperable, Reusable)の原則に基づいて管理されるよう支援しています。
これにより、データの検索性、アクセス可能性、相互運用性、再利用性が保証され、科学の発展に寄与しています。
FAIR原則を徹底解説:見つけられる・アクセスできる・相互運用できる・再利用できるとは
FAIR原則は、データの発見性、アクセス性、相互運用性、再利用性を高める国際的ガイドラインで、オープンデータ公開の標準として広まっています。
OpenAIREの研究データ管理の仕組み
研究データの収集と提供プロセス
OpenAIREは、研究データの収集、保存、提供のためのプロセスを確立しています。
研究者が自身のデータをリポジトリに登録すると、そのデータは他の研究者や一般市民が自由にアクセスできるようになります。これにより、研究の透明性が向上し、科学の進展が促進されます。
フェアデータの実現
FAIRデータとは、データが見つけやすく、アクセス可能で、相互運用可能で、再利用可能な状態を指します。
OpenAIREは、研究者が自身のデータをFAIRの原則に従って管理できるよう支援しています。これにより、データの品質が保証され、他の研究者がデータを効果的に活用できるようになります。
OpenAIREの活用方法と事例
研究プロジェクトへの統合
OpenAIREは、さまざまな研究プロジェクトに統合されており、研究成果の管理や共有を効率的に行うためのツールとして活用されています。
特に、欧州連合の研究プロジェクトにおいて、OpenAIREは研究データの公開と管理の基盤として重要な役割を果たしています。
学術機関での導入事例
多くの欧州の学術機関が、OpenAIREを利用して研究成果の管理を行っています。
これにより、各機関は自らの研究成果を広く発信し、他の研究者や機関との連携を強化することができます。例えば、大学や研究機関がOpenAIREを利用することで、論文やデータの公開が簡素化され、研究の影響力が向上しています。
OpenAIREの今後の展望と課題
国際的な連携と拡大
OpenAIREは、欧州内だけでなく、世界中の研究機関との連携を強化することを目指しています。
国際的な協力を通じて、研究成果の共有がさらに進展し、科学の発展に寄与することが期待されています。特に、European Open Science Cloud(EOSC)との連携により、より広範なデータ共有が実現される見込みです。
研究データ管理の課題
一方で、研究データ管理にはいくつかの課題が残っています。
データの品質や再利用性の確保、各国の異なるデータ保護法への対応など、解決すべき課題があります。これらの課題を克服するためには、データの標準化や国際的な協力が不可欠です。
まとめ
OpenAIREは、オープンサイエンスの推進において重要な役割を果たしており、研究者や学術機関にとって欠かせないツールです。
研究データの管理や共有を効率的に行い、科学の発展を促進します。今後も国際的な連携を強化し、研究成果の公開と共有を推進することで、さらなる科学の進展が期待されます。
参考
- Zenodo. (n.d.). Retrieved October 15, 2024, from https://zenodo.org
- OpenAIRE. (n.d.). Validator registration guide. Retrieved October 15, 2024, from https://www.openaire.eu/validator-registration-guide
- OpenAIRE. (n.d.). Monitoring guide. Retrieved October 15, 2024, from https://www.openaire.eu/monitoring-guide
- OpenAIRE. (n.d.). Retrieved October 15, 2024, from https://monitor.openaire.eu
- OpenAIRE. (n.d.). The new OpenAIRE monitor: Brand new dashboards and features. Retrieved October 15, 2024, from https://www.openaire.eu/the-new-openaire-monitor-brand-new-dashboards-and-features
- OpenAIRE. (n.d.). Explore. Retrieved October 15, 2024, from https://explore.openaire.eu
- OpenAIRE. (n.d.). Explore: Search open science & scholarly works. Retrieved October 15, 2024, from http://www.openaire.eu/blogs/explore-search-open-science-scholarly-works
- Zenodo. (n.d.). About Zenodo. Retrieved October 15, 2024, from https://about.zenodo.org
学術情報発信ラボ 執筆・編集チーム
学術サポートGr.
学術情報発信に携わる編集チームとして、長年にわたり学術出版に関する深い知識と実績を有する。国内の数十誌にわたる学術雑誌の発行サポート経験を活かし「学術情報発信ラボ」の執筆チームとして、研究者や編集者に向けた最新のトピックや、研究成果の迅速な発信に貢献する情報を発信している。
専門分野は学術出版、オープンアクセス、学術コミュニケーションであり、技術的な側面と学際的なアプローチを交えた解説が特徴。