Pubpeerは学術論文の信頼性向上を目指す出版後査読プラットフォームで、発行済みの論文に対して匿名でコメントが可能でDOIやPubMed IDなどの識別子で論文を検索し、コメントを投稿する仕組みが特徴です。この記事では、Pubpeerの特徴、利点、課題を解説し、出版後査読の意義を考察します。

Pubpeerとは

Pubpeerサービスとは

Pubpeerは、学術論文の質を高めるために、発行済みの論文へ査読をおこなう掲載後査読(出版社査読)ができるオンラインプラットフォームです

研究者や学術関係者が論文に対して掲載後(出版後)に意見を述べたり、問題点を指摘したりすることで、科学的な議論を活性化させることを目的としています。

Pubpeerの目的と設立経緯

Pubpeerは2012年に設立され、学術論文の質を高めるとともに、出版後に発生する問題を迅速に発見し、訂正することを目的としています。

従来のピアレビュー(査読)が出版前の段階で行われるのに対し、Pubpeerは出版後の査読を可能にしており、学術的な透明性を向上させることに焦点を当てています。

Pubpeerの歴史と背景

総説の背景

Pubpeerは2012年10月に設立されました。創設者は、フランス国立科学研究センター(CNRS)の神経科学者の3名です。創設の背景として、以下のような学術界の課題があると感じておりました。

学術界の査読の問題点

  • 従来の出版前査読プロセスだけでは、論文の質を十分に保証できない可能性がある
  • データの捏造や不正を見逃すケースがある
  • 出版後も継続的に論文を評価する必要性がある

彼らは、学生時代のジャーナル・クラブでの経験から、出版された研究について議論できるフォーラムの必要性を感じ、Pubpeerの創設に至りました。

掲載後査読の広がり

Pubpeerの登場以降、掲載後査読(出版後査読)の重要性が広く認識されるようになりました。その背景には:

掲載後査読の広がりの背景

  • 研究の透明性向上への要求
  • 科学的知見の再現性に対する関心の高まり
  • インターネットを活用した迅速な情報共有の可能性

などがあります。

Pubpeerの特徴と影響

Pubpeerは主な特徴として以下のような特徴を持っております。

Pubpeerの特徴

  • 匿名でのコメント投稿が可能です。
  • あらゆる分野の学術論文を対象としており、出版された記事のDOIなどがあれば、すぐにでも掲載後査読のためのコメントを書くことが可能です。
  • 無料で利用可能

これらの特徴により、Pubpeerは「捏造、改ざん、盗用」を発見するツールとして発展し、学術界に大きな影響を与えています。

特に、2014年のSTAP細胞論文の不正を初期に指摘したことで注目を集め、その後も多くの論文の問題点を指摘し続けています

Pubpeerの使い方と仕組み

投稿方法とコメントのルール

Pubpeerでコメントしたい論文を投稿するには、まず特定の論文を検索する必要があります。検索には、DOI、PubMed ID、arXiv IDなどの一意の識別子を使用します。

これにより、特定の論文を迅速に見つけ出し、対象となる論文に対して査読コメントを投稿することができます。

また、一度コメントが投稿された論文については、その後のコメント追加はログインすれば誰でも可能です。匿名での投稿が許可されており、研究者が安全に自由な意見を述べる場としての役割を果たしています。

Pubpeerの批判と問題点

匿名性による信頼性の懸念

Pubpeerの最大の特徴は、匿名性でコメント書ける点です。

匿名でコメントを投稿する場合は、登録は簡単なコードを取得することで、一意の人となり、コメントすることができます。(メールアドレス、名前を入れて実名でコメントすることもできます。)

この最大の特徴である匿名のコメント機能は、意見を自由に発言することを促進する一方で、信頼性の低いコメントや悪意のある投稿が行われるリスクも生じます。

匿名性によって投稿者の身元が明らかにならないため、コメントの質を保証することが難しく、虚偽の情報や個人的な攻撃が行われる可能性があります。

このため、Pubpeerではコメントのモデレーションが重要な役割を果たしており、不適切なコメントを排除するための対策が取られています。

批判的コメントが論文の評価に与える影響

否定的なコメントが過度に強調されることで、論文全体の評価が不当に低下するリスクもあります。

Pubpeerでは、あくまで建設的な批判を奨励しているものの、批判的なコメントが他の研究者や一般の読者に与える影響は大きく、コメントのバランスを保つことが重要です。

また、投稿者が匿名であることから、論文の評価におけるバイアスを避けるための工夫が求められています。

Pubpeerと他の出版後査読プラットフォームの比較

他のプラットフォーム(例:Retraction Watch、F1000Research)との違い

Pubpeerと他の出版後査読プラットフォームには、それぞれ異なる特徴があります。

Retraction Watchは、撤回された論文に関する情報を提供し、その理由や背景を詳しく追跡することに特化しています。

F1000Researchは、論文のオープンレビューを推進し、査読者の名前を公開することで透明性を高めています。一方、Pubpeerは匿名でのコメント投稿を許可しており、自由な意見交換ができる点が特徴です。

各プラットフォームの強みと弱み

Pubpeerの匿名性は、批判を恐れることなく意見を表明できるという強みがありますが、同時に信頼性の問題も抱えています。Retraction Watchは、撤回された論文に関する信頼できる情報源として評価されていますが、情報の範囲が限定されています。

F1000Researchはオープンレビューによる透明性が高い反面、投稿者にとっては査読者の意見が公開されるプレッシャーがあるかもしれません。

まとめ

Pubpeerは、学術論文の信頼性を高めるための出版後査読プラットフォームです。

論文に対する自由な議論を促進し、研究の質を向上させるための重要なツールとして位置づけられています。特定の論文に対するコメントには、DOIやPubMed IDなどの一意の識別子が必要で、匿名での投稿も可能です。Pubpeerの課題として、匿名性によるコメントの信頼性の維持が挙げられますが、出版後査読の重要性が増す中でその役割はますます拡大するでしょう。

参考

  • PubPeer. (n.d.). Search publications and join the conversation. Retrieved October 9, 2024, from https://pubpeer.com/search?q=10.1038%2Fnature12968
  • PubPeer. (n.d.). PubPeer: Search publications and join the conversation. Retrieved October 9, 2024, from https://pubpeer.com/